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Ⅲ
「ちょっとだけ寄っていい?」
学校を出て駅に向かう途中、奈帆がコンビニの前で足を止めた。
「何買うの?」
「家で勉強するときに食べるチョコ」
佐々と奈帆が話しながらコンビニに入って行く。
私が入り口の手前で立ち止まると、佐々たちに続こうとしていた翔琉くんが振り向いた。
「朝香は行かないの?」
「私は買い物ないから、ここで待ってる」
「そっか。俺、飲み物買ってくるね」
「いってらっしゃい」
笑顔で手を振って、コンビニに入って行く翔琉くんを見送る。
みんなが行ってしまってひとりになると、私の肩から力が抜けた。
みんなと――、特に翔琉くんと一緒にいるときの私は、常に気を張っていなければならなくて疲れる。少しでも気を抜けば、翔琉くんを無意識に傷付けてしまうかもしれないからだ。
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