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 やっぱり、私には誰かと付き合うなんてムリだったのかもしれない……。  ぼんやりと考えながら、立っている場所を移動しようとすると、突然、キキィーッと自転車のブレーキ音が耳に届いた。 「藤野?」  名前を呼ばれて、肩からぐいっと後ろに引っ張られる。背中がなにかにぶつかって上を向くと、佐々の顔が逆さまに見えた。 「なにぼーっとしてんだよ。危ないな」  ちょっと焦ってる佐々の声。中学生のときよりも、少し低くなったその声が、私の胸をチリチリと焦がす。 「すみません、大丈夫すか?」  茫然としたままの私の代わりに、佐々が誰かに謝っている。私が周りも見ずに歩き出したせいで、通行しようとしていた自転車がぶつかりそうになったらしい。 「すみません……」  気付いた私も、慌てて謝った。そのあいだ、佐々の手はずっと私の肩に触れていて。不謹慎だけど、胸がドキドキした。  佐々に触れられるのは、怖くなかった。  私を庇ってくれたのが、佐々の手だったことが嬉しくてほっとした。
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