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「気を付けろよ。藤野、昔からちょっと危なっかしい」
自転車に乗った人が去ったあと、佐々が後ろから私に顔を寄せるようにして言った。
私の肩に手を置いたままの佐々との距離が、ひさしぶりにとても近い。
「ごめん、ありがとう」
ダメだ、嬉しい気持ちをうまく隠せない。
ふわふわとした気持ちで頷いた、そのとき。
「朝香?」
コンビニから出てきた翔琉くんが、佐々から引き離そうとするように私の腕をつかんだ。
翔琉くんに触れられた瞬間、自由なほうの手が、咄嗟に翔琉くんをバシッと叩いてしまう。
「ご、ごめん……。違う……」
無意識に出た行動にハッとしたときには、すでに遅くて。顔を引き攣らせた翔琉くんが、目を伏せて私から離れた。
「ごめん、翔琉。今、藤野が自転車にぶつかられそうになってたから庇っただけ。藤野も、まだそのショックが残っててびっくりしたんじゃない? な?」
私と翔琉くんの微妙な空気に気付いた佐々が、なんとかフォローしようとしてくれる。
でも……。佐々がなにを言っても、翔琉くんは硬い表情を崩さなかった。
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