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◆
その夜、翔琉くんから電話がかかってきた。
「朝香って、最初から今もずっと……、俺のこと、全然好きじゃないよね?」
笑いながら、冗談っぽく訊ねてきた翔琉くんの声は、通話口の向こうで微かに震えていた。
「もともと、俺が押して付き合ってもらった感じだし。いつか好きになってくれたらいいな〜って思ってたけど、ムリなのかなーって……。かっこ悪いけど、朝香の顔見て言えそうにないんだよね」
泣くのを堪えてるみたいな翔琉くんの声が、胸に痛い。
「別れよっか」
翔琉くんが、へへっと泣きそうに笑う。
「ご、めん……」
「謝んないでよ」
翔琉くんの「運命」に乗っかると決めたのは私なのに……。うまくできなかった。
翔琉くんに、上手に恋することができなかった。
私にはどうしたって佐々が──。
佐々だけが特別だ。
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