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「おじさん、誰……?」
一歩後ずさって逃げようとしたら、彼が不気味な感じに口角を引き上げて、私の腕をつかんだ。
「だから、君のお父さんのお友達だよ」
「……、違う!」
思いきり腕を振り回して逃げようとしたけど、男の人の力は強かった。
「怖がらないでいいよ。大丈夫だから」
「……、ち、がう! 違うぅ!」
私を引っぱってどこかへ連れて行こうとする男の人に、必死に抵抗する。
足を踏ん張って頑張るけど、もともと人の通りが少ない道には、助けを求められそうなおとなもいない。
「やだ、やだっ!」
泣きそうになって、それでも連れ行かれまいと力いっぱいに抵抗していると、
「藤野?」
と、名前を呼ばれた。その瞬間に、男の人の注意がそれて、つかまれていた手が離れる。
震えながら振り向くと、自転車に乗った佐々がいる。私がおかしな状況に巻き込まれていることに気付いた佐々は、自転車を放り出すとすごい勢いで駆け寄ってきた。
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