2/10
前へ
/23ページ
次へ
「おじさん、誰……?」  一歩後ずさって逃げようとしたら、彼が不気味な感じに口角を引き上げて、私の腕をつかんだ。 「だから、君のお父さんのお友達だよ」 「……、違う!」  思いきり腕を振り回して逃げようとしたけど、男の人の力は強かった。 「怖がらないでいいよ。大丈夫だから」 「……、ち、がう! 違うぅ!」  私を引っぱってどこかへ連れて行こうとする男の人に、必死に抵抗する。  足を踏ん張って頑張るけど、もともと人の通りが少ない道には、助けを求められそうなおとなもいない。 「やだ、やだっ!」  泣きそうになって、それでも連れ行かれまいと力いっぱいに抵抗していると、 「藤野?」  と、名前を呼ばれた。その瞬間に、男の人の注意がそれて、つかまれていた手が離れる。  震えながら振り向くと、自転車に乗った佐々がいる。私がおかしな状況に巻き込まれていることに気付いた佐々は、自転車を放り出すとすごい勢いで駆け寄ってきた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

157人が本棚に入れています
本棚に追加