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「おじさん、誰だよ」  佐々が私を守るように男の人の前に立つ。不気味に笑っていた男の人は、佐々の登場に顔色を変えて、慌ててどこかへ逃げて行った。 「大丈夫? あいつ、藤野の知ってる人じゃないよな?」  男の人が去ったあと、佐々は私の震えが落ち着くまでそばにいて、家まで送ってくれた。  そのあとしばらくして、その男の人が別の場所で他の女の子を連れ去ろうとして警察に捕まったという話を聞いた。  たまたま佐々が通りかからなかったら、私はどうなっていただろう。考えただけでも、恐怖に震えてしまう。  佐々がいてくれてよかった――。  それまでほとんど話したこともなかった同級生の佐々との関わりができたのは、子どもの頃のそんな恐怖体験があったから。  だけど、それをキッカケに私たちが特別親しくなったかと言われれば、そうではない。私と佐々は、顔を合わせれば挨拶を交わす程度の友達だった。  私が佐々のことを男の子として気にするようになったのは、中学生になってから。
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