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中学に入学して少し経った頃。テニス部に入った私は、同じ部活の三年生の男子の先輩に付き纏われるようになった。
告白をされて断ったのに、部活終わりに待ち伏せされたり、休み時間に一年の私の教室に会いに来たり。周囲が「あの先輩と付き合ってるの?」と勘違いするくらい、彼の付き纏いはしつこかった。
仲の良い友達は私のことを心配して先輩からさりげなく守っていてくれていたけど、あるとき、部活帰りに友達と別れたところで先輩に待ち伏せされた。
「藤野さん、少しだけふたりで話さない?」
先輩がそう言って私の手を捕まえたのは、小学生のときに知らない男の人に連れ去られそうになった現場のそばだった。
先輩が私の手に触れたとき、ぶわっと全身に鳥肌が立った。足が震えて、額から冷たい汗が流れてきた。
先輩からの告白を断ったときは打ち明けなかったけれど、小学生のときに連れ去られそうになってから、私は男の人に恐怖を感じるようになっていた。
少し距離を空けて話すくらいなら大丈夫だけど、近付かれすぎたり、触られたりすると震えて冷や汗が出てしまう。
小学生の頃はおとなの男の人が苦手なだけだったけれど、中学生になって、同世代の男子達の背が高くなったり、声が低くなったりしてくると、クラスメートや先輩にも苦手意識を感じるようになった。
だから私は、誰とも付き合えない――。
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