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Ⅰ
「藤野ってさ、ほんとうに翔琉のことが好きで付き合ってる?」
偶然ふたりきりになった教室で佐々に訊ねられたとき、寿命が縮むかと思うくらいに心臓がドキッとした。
きつく問い詰められているわけでも、興味本意にからかわれているふうでもない。
だったらどうして、そんなことを訊いてくるのか。佐々の意図がわからなくて、反応に迷う。
「なんで……?」
平静を装って聞き返す。けれど、その実、手のひらに、じんわりと変な汗をかいていた。
「んー、なんとなく?」
「なんとなくって何?」
「なんとなくはなんとなくだよ。藤野が翔琉と話してるときって、いつもなんか違和感があるっていうか……、温度差を感じる」
佐々の言葉に、身体が内側から、かーっと熱くなった。
そんなはずはない。
私と彼氏の翔琉くんは、クラスの友達から「いつも仲良いよね」って羨ましがられるほど、順調なお付き合いをしているのだ。
それなのに、どうして……。どこでそんなふうに思われたんだろう。
「どういう意味? 翔琉くんと話してるときの私の態度が冷たいってこと?」
つい冷静さを欠いて、強めに問いかけると、頬杖をついていた佐々がフッと笑った。
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