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孤独
バシャ
バケツから勢いよく放出された水が放物線を描きながら頭頂部に降り注いだ
「汚いものは洗いなさいってママが言ってたの」
「マジ、そりゃ汚いものは念入りに洗って」
「キャハハ、汚い女を洗ってあげるとか、ボランティア活動家を名乗れるね」
トイレの入り口に立つ三人は、いつものように散々“汚い”を繰り返し、無反応な私に飽きたのか、空になったバケツを転がして踵を返した
水に濡れた所為で重い制服
寒さを通り越して痛さしか感じない肌
なにより、トイレの床に座り込んでいるままの自分にため息を吐き出す
・・・冬に水はやめて欲しい
そんな常識が通じるような相手ではない
止めようとしてもガタガタと震える身体と、それの所為で鳴り止みそうもない奥歯が更に痛さを煽ってくる
それでも
シンとした放課後の校舎が完全施錠される前に出なきゃいけない
フラつきながらも立ち上がり、ポタポタと落ちる水分を切るために、ブレザーを脱いで小さくたたみながら絞る
悴む手で髪から順番に下へと絞り終わると、離れた所に転がっていたお陰で濡れずに済んだ鞄からタオルを取り出した
「・・・ハァ」
高校三年という微妙な時期に転校してきた学校は、新参者を受け入れないばかりか牙を剥いてきた
上靴から教科書に至るまで、落書き程度なら可愛いもので、忽然と消えているのは当たり前
それに無反応の私に苛立ったのか、あからさまな虐めを受けるようになったのは二学期が始まって直ぐだった
理由も分からないそれは大学受験のストレス発散かなんなのか・・・
人間関係の憂さ晴らしをするかのように続く
『汚い』を繰り返す嫌がらせは、いくら無反応を決めていても心を抉ってきた
「・・・ハァ」
グチョグチョと歩くたび水音を立てる上靴に慣れたところで生徒用玄関まで出た
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