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side 亜柊
亜子ちゃんが深い眠りに落ちたことを確認して西田を呼んだ
「「失礼します」」
西田と共に入って来たのは、この街で中堅の個人病院の医師
ベッドに腰掛けたままの俺に頭を下げると寝ている亜子ちゃんに近づいた
明らかにサイズの違うワンピースが西田の手で脱がされる
露わになる肌には、その白さが霞むほどの痣が見えた
それは新しいものから古いものまで無数にあって、想像していたはずなのに胸が苦しくなった
「酷いな」
診断書を書きながら呟く医師
身体を裏返しても変わらない痕に抑えていた苛立ちが口を突いて出た
「気分悪いな」
「どういたしましょうか」
同じように眉を上げ下げしていた西田が持って来た報告書に目を通す
亜子ちゃんをいじめていた三人とその家族と勇気を出して打ち明けたのに無いことにした担任も調べがついている
いじめた原因すらくだらないことにため息を吐いて
亜子ちゃんが味わったより苦しい罰を与える気になった
「月曜日にしようか」
「承知しました」
謎かけのような会話が終わるまで控えていた医師は
「本来なら通報義務があります」
至極普通なことを並べた
「警察が介入したところで、一体どのくらいの処分になると思う?」
「・・・っ」
静かな怒りを解放したことでこちらの思いと言葉の意味を理解してくれたようだ
物分かりの良い人間は嫌いじゃない
「診断書、今日中に持ってきて」
「畏まりました」
「西田、お見送りして」
「先生、こちらへ」
医師と話している間に西田の手によってワンピースを着せられた亜子ちゃんは、お話の中に出てくる眠り姫みたいに可愛い
本当は智子ちゃんの服を着ていることすら腹立たしいのに
意識のないうちに着替えさせる訳にはいかないと踏み止まっている
「嫌な思いは終わりだからね」
唯一、痕のない首筋に指を滑らせる
「・・・んっ」
意識はないのに反応する可愛い姿と鼻から抜ける甘い声に
噛みつかんばかりの昂る気持ちを必死で抑えた
side out
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