王子様が・・・

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夢を見ていた 苦しいことなんて 一つもない 幸せな夢 これは夢なのに 頭を撫でてくれる優しい手が リアルな感じもして 「・・・っ」 意識が浮上した途端いつもより狭い視界が捉えたのは 王子様の寝顔だった ・・・え、っと なんだっけ? よく考えて・・・ 亜柊さんとフルーツティーを飲んだあたりまでは記憶が残っている その後・・・どうしたんだっけ? ・・・亜柊さんに抱き上げられて いや、違う、あれは夢だよね てことは“両想い”は夢で 残念・・・いや・・・ 今はそんなことじゃない 醜態を晒した私を慰めてくれた亜柊さんと何故同じベッドで寝ているかが問題 「難しい顔してるね、亜子ちゃん」 「・・・ヒャッ」 亜柊さんの長い指が眉間をスッと撫でた 一緒に寝ていたことすらパニックなのに亜柊さんが起きている 「・・・あの、私」 自分でも気づかないうちに、何かやらかしたに違いない うん。そうに違いない この場合、家主である亜柊さんに非があるとは思えないから 「ごめんなさい」 謝る以外の方法があるなら教えて欲しい 「フフ、どうして謝るの?」 それを笑う亜柊さんは、あろうことか顔を近づけてきて 「・・・っ」 これでもかと目を見開いた私のオデコに口付けた チュ なになになになになになになに・・・ 今、チュって音がした 完全にパニックに陥る私は 次の瞬間、亜柊さんの腕の中にいた 「・・・っ!」 ソファで抱きしめられた時より数百倍ドキドキするのは身体がより密着しているからだろうか ゔぅ・・・心臓に、悪い 恐ろしい速度で打つ鼓動は力を抜いたら止まるかもしれない そんな私の脳内パニックは 「慌てちゃって可愛いね」 耳元からダイレクトに伝わる甘い声に停止した
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