【第4話 - 執着者】

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  「部屋の鍵を開けろ。じゃないと八神悠斗が俺の女を寝取ったってネットの記事にするぞ。それでもいいのか? あと、ここへは呼ぶなよ。スマホは俺が預かる」  完全なる脅迫だった。しかし悠斗さんに迷惑はかけられない。そんな記事を拡散されたら彼の社会的地位や立場が危うくなってしまう。それだけは避けなきゃ。言う通りにしないと瑛士は本気で行動に移すだろう。  私は震える手で部屋の鍵を開錠し、スマートフォンを瑛士に渡した。もう悠斗さんに連絡をすることは不可能だ。  部屋に引きずり込まれるようにして入らされた。力で敵うはずもなく、恐怖でなすがままだ。 「やめて……」必死に絞り出した声も弱々しいもので、全然瑛士には届かない。 「なあ、椿。悪かったよ。俺が悪かった」  優しく頬を撫でてくる彼の手に恐怖を感じた。その手が顔全体を覆うように伸ばされ、ぐっと頬を強く押さえにかかる。私が逃げられないようにしているんだ。涙が溢れ、恐怖に身が捩れた。  彼の唇がとめどなく溢れる私の涙に触れた。徐々に耳元へ唇が移動し「お前は俺のもの。ずっと、ずっと…」と囁かれた。 「いやあぁっ」  
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