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この仕事は私が誇りをもってやっているのだから、仕事にプライベートを持ち込みたくない。必死に涙を堪えた。
「手当までしていただいて、お手数をおかけしました。申しわけありません」
「謝らないでください。それより、いつもこの部屋を華やかにしてくださってありがとうございます。社外のお客様がこの部屋を訪れた時、いつも褒めてくださるのですよ。この空間と、特にお花が綺麗だと。椿さんのおかげですね」
この会社に花を届けるようになってから、一年くらいが経った。そこから八神社長とは顔なじみになり、仲良く喋ることが増えていった。彼は男性にしては珍しく花好きであるため、花のことをよく聞かれた。詳しく話しているうちに親密になり、今では『椿さん』と下の名で呼ばれるようになった。
「お褒めいただきありがとうございます。恐縮です」
「でも、今日は椿さんが飾って下さったお花に元気がありませんね。どうかされましたか?」
ドキリとした。出来上がった花を見ると、確かに今日は飾り方がいつもに比べて雑念が多かったので、自分的に満足のいく仕上がりでないことは確かだ。しかしそれが、どうしてわかっちゃったんだろう……。
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