【第4話 - 執着者】

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「片桐と山並、二人とも椿さんを陥れるような悪口を言いながら、残業と偽って会社で仲良くしていたじゃないか。そんな状況を普通の人間は許さない。彼女が別れを切り出しても当然だ。片桐には山並がお似合いだと思うし、椿さんとはもう縁が切れているのだから、僕と付き合ったとしてもなんら問題ないだろう」 「しっ、しかしこちらとしては椿と別れたつもりは……」 「さっき彼女が言っただろう。片桐とはもう終わった、と。椿さんはすでにご自分の気持ちをはっきりさせている。男なら潔く立ち去れよ。これ以上彼女を傷つけるな!!」  悠斗さんが吠えた。私のために本気で怒ってくれている。嬉しかった。 「椿っ。嘘だろ? 俺のこと好きだよなっ。なあっ! 椿っ!!!!」  それを聞いて悠斗さんの瞳が鋭く煌めいた。「片桐がどれだけ椿さんを傷つけてきたか、僕は全部知っている。彼女にこれ以上の苦痛や危害を与えるつもりなら、僕の力をもって阻止するから覚悟しろ」  瑛士はわなわなと肩を震わせ、悠斗さんを睨みつけ鋭く息を吸い込んだ。 「…わかりました」  これ以上の言及が無理だと判断した瑛士は踵を返した。去り際、私の耳に一言残して。「これが最後だと思うなよ」  背中に冷たい汗が流れるのを感じた。私は慌てて玄関の扉を閉めた。
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