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瑛士……。
私は胸の高鳴りを感じながら瑛士の最後の言葉を反芻した。その言葉はまるで鋭い針で心を突き刺すかのような痛みを伴っていた。
「椿さん」
悠斗さんの温かな声が私の不安を中和してくれる。彼が私の肩に軽く触れ、自分の方へ引き寄せてくれた。
「大丈夫でしたか?」
私は頷いた。「ありがとう、悠斗さん」
彼は微笑みながら私の髪を撫でて、「これからは僕がついています。心配する必要はありません」と囁いた。
悠斗さんの手が私の震える手を優しく包み込む。彼の温かさに触れることで不安や戸惑いが徐々に薄れていく。
「怖かったですね」彼がそっと私の目を見て言った。その目が深い理解を示してくれている。
「はい…」
声が少し震えた。まさか瑛士がこんな奇行に出るなんて思いもしなかったから。
「おまじないです」
そう言って悠斗さんは私の額に優しくキスを落としてくれた。彼の優しさが私の心の中に溶け込んでいく。
「悠斗さん…」
「なにも心配しないでください。これからは、僕があなたを守りますから」
彼の言葉に、涙が一筋零れ落ちた。
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