公爵令嬢の縁談

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 妙に大人しくなった殿下を見てみると、クシャクシャになった隣国の王太子宛の手紙を勝手に読んでいる。  手紙の内容なんて、季節のご挨拶や日常を綴っているだけの面白みの無いものだ。  だから見せたくなかったのに。 「縁談が増えたのは、ジュニーが城に来るようになって、また噂が広まったからね」 「噂?」  殿下が、そっと私のベールを持ち上げた。  ベールのない素顔を晒すのははじめてで、私は狼狽える。薄いベールだけでもマスク効果はあったようで、素顔を見せるのがすごく恥ずかしい。 「元隣国の姫にそっくりな公爵令嬢の噂」 「元隣国の姫、お母様のことね?」 「ベール越しでもわかるんだよ。だけど素顔はもっとかわいいな」  ストレートに褒められて頬が火照る。 「隣国の王太子とジュニーはイトコにあたるから結婚は無理じゃないかな?」 「あら、そうなんですの?」  前世の日本ではイトコ同士の結婚は認められていたけど、こちらの世界ではダメなのか。  もともと隣国の王太子と結婚をする気などないのだけど。
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