41人が本棚に入れています
本棚に追加
妙に大人しくなった殿下を見てみると、クシャクシャになった隣国の王太子宛の手紙を勝手に読んでいる。
手紙の内容なんて、季節のご挨拶や日常を綴っているだけの面白みの無いものだ。
だから見せたくなかったのに。
「縁談が増えたのは、ジュニーが城に来るようになって、また噂が広まったからね」
「噂?」
殿下が、そっと私のベールを持ち上げた。
ベールのない素顔を晒すのははじめてで、私は狼狽える。薄いベールだけでもマスク効果はあったようで、素顔を見せるのがすごく恥ずかしい。
「元隣国の姫にそっくりな公爵令嬢の噂」
「元隣国の姫、お母様のことね?」
「ベール越しでもわかるんだよ。だけど素顔はもっとかわいいな」
ストレートに褒められて頬が火照る。
「隣国の王太子とジュニーはイトコにあたるから結婚は無理じゃないかな?」
「あら、そうなんですの?」
前世の日本ではイトコ同士の結婚は認められていたけど、こちらの世界ではダメなのか。
もともと隣国の王太子と結婚をする気などないのだけど。
最初のコメントを投稿しよう!