公爵令嬢の縁談

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「チッ、また始まった…イチャイチャするなら余所でやってもらえないかなあ」  渋い顔のお兄様が、神経質に机を指でコツコツ叩いている。舌打ちまで聞こえてきた。かなりイラついているご様子。 「お兄様、この人追い出してください、私の仕事の邪魔もしているんですよ」 「ほら、ジュニー貸して?」   全く耳を貸さない殿下が、更に体重をかけて来た。 「ダメですってば」 「そんなにぎゅっとしたら、手紙がクシャクシャになるよ」 「あっ!クシャクシャ…もう殿下!」  …とまあ、こんな風にここ最近では、お兄様の眉間のシワが深くなるような光景を見せつけている。  三か月の間、慎重に私との距離を縮めて来たクローネ殿下。  まるで猫のご機嫌を伺うように、辛抱強くゆっくりと。  はじめは、お兄様の特権である頭をポンポンすることを殿下が真似した。  それを私が許したことで、急速に距離が近くなった。  本当はキスだって、その先だって許してもいいと思っている。  でもこの世界では、未婚の男女の過度なスキンシップは非常識とされているようだ。  触れられて最初から嫌悪するタイプと、知るにつれて嫌悪が増すタイプがいるが、殿下にはそれを全く感じない。  むしろ、もっと触れて欲しいと思うくらいにもどかしい。  表面上は澄ました顔をしている私だが、もう完全に恋に落ちていた。
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