公爵令嬢の縁談

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 一見万能な見た目の殿下だけど、真面目で努力の人なんだよと、お兄様から教えてもらった。  はじめて私の頭に手を置いたときの、殿下の指先が少し震えているのが見えて私は理解した。  この人は誠実で優しい人。  きっと私の事を大切にしてくれるだろうと。 「ジュニー、父上が溜め込んでいた分が終わったところで、次はこれだからね」  お兄様が、殿下の首根っこを掴んで私から引き剥がすと、ローテーブルの上に紙の束を落として言った。 「ジュニーが語学の勉強をしている間に届いた新しい縁談だよ」 「あら?すでにお断りしたはずの家からも届いていますが?」 「そういうもんさ。さて、僕は気分転換に外に出るから、あとは適当にやっておいて」  首と肩をコキコキと鳴らしながら、お兄様は部屋を出ていった。  お兄様の執務机に積まれていた書類はキレイになくなっている。  なるほど、残された仕事は目の前の私の縁談のみということなのか。 「えええ?」  既にお断りした先と、新規の申し込みが半々で、数十通に上る。  いつまで続くのだろうか。考えると軽くめまいがしてきた。
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