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化ける
マーガレット魔法学校に通うメイサは9月から2年生になった。
うだるようなこの夏を、メイサはおばあちゃまの薬草畑の手入れを手伝って過ごした。
魔法でもある程度は快適にしてあげられるが、やはり、自然の中で育った草が一番くすりにした時に効果があるのよ。とおばあちゃまに言われ、水やりや、草むしり。害虫の駆除も一生懸命手伝った。
長い進級へのお休みには宿題が出されていた。
メイサは、薬草を使っての授業は大層得意だったが、他の授業はそういう訳にもいかない。
今回のお休みには、新学期になったら、杖と呪文で、小さなコップを動物に変えなければいけない。という予習が出されていた。
もちろん、新学期になったら、すぐに宿題の成果を試される試験が行われることだろう。
メイサは一生懸命練習したのだが、どうにも上手くいかないのだ。
コップはカタカタッと動いても何の動物にも変化しない。何度やっても上手くいかないので、
『もしかしたら呪文が間違っているのかしら?』
と、思い、教科書で何度も確認した。
ママは時々おばあちゃんの家に来ては、メイサの様子を覗いていたが、ついに我慢できなくなって、メイサにアドバイスをした。
「ねぇ、メイサ。杖の向きは合っているのかしら?あなたが杖を振った後、準備してあるコップではなくて、キッチンのスプーンがネズミに化けてみ毛て行ってしまったんだけど。」
ママが我慢できなくなったのは、宿題が上手くいかないからではなく、メイサの呪文は効いているのだが、的外れな場所に呪文をかけるので、夏休み中、メイサから離れた色々な小さな食器たちが動物になって逃げて行ってしまうからだ。
勿論、ママはすぐに呪文を解いて、元通りにするのだが、ママが見ていない所で、家で一番上等な銀器のシュガーポットが何かに化けたらしくて見つからないのだ。
ママに言われて、メイサは、自分の身長が、呪文をかける予定のコップよりも大分低い位置にある事に気が付いた。
「あの~、ママもしかして、私迷惑かけてたかな?」
「いいのよ。ただね、魔法は効いているのだから、もっと全体に目を配って、何が上手くいかない原因かを早めに探って頂戴ね。」
「ありがとう。ちょっと踏み台を使ってみる。」
メイサは、高いところの植木にお水をあげる時の踏み台を持ってきて、机の上のコップにしっかり杖の先を向けて呪文を唱えた。
化けた化けた。
ようやく、メイサの願っていた可愛いリスに。
メイサ自身も、薬草しかできない女の子じゃないんだ。と、自信をもって、魔女として、一つ上の段階に化ける事が出来たようだ。
新学期の試験では、もちろん、クラスのみんなと同じように上手くものを動物に化けさせることができた。
クラスの友達の中には、大きなオオカミや、熊など、危険な動物に物を化けさせた生徒もいて、先生からは、
「上手に化けさせるのは良いけれど、限度を考えなさい。魔法使いに一番必要なのは、分別ですよ!」
と、叱られていた。
メイサは、大きな動物にはまだものを化けさせることができないので、
『すごいな。』
と、ひそかに思っていた。確かに外の授業でだったら、あの子達も叱られなかっただろう。
そう思うと、メイサのリスは大成功。と言った所だろうか。
また一つ成長したメイサの次の活躍を楽しみにしたい。
【了】
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