トコダトコさん ④冒頭その2

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トコダトコさん ④冒頭その2

トコダトコさんDM対談、今回はその5回目。『ビビっとくる冒頭』です。 彼女がレビュアーとして広く認められているのは、音楽によって培われた感性とそれを言語化する表現力にあると思います。 『これはいい』冒頭の実例を上げながら、その感性を感じて頂ければ幸いです。 🎸「まずは、山城木緑さんの「つぐない」という作品を。冒頭のはじまりはこんな感じです。 ☆  ろくな人生じゃなかった。  と、他人からは言われていただろう。  親からもそう言われたくらいだからな。母親の最期の言葉はそれだった。 ☆  これはもう続き読みたくなりますよね!?w ある罪人の晩年を描いたヒューマンドラマなんですが、罪人が悪人なのかとラストには深く考えさせられる物語になっています」 🛶「なるほど、これは『行為』と『人格』は果たして分けて考えることができるのかどうか? という本質的な問題ですね。近代の法律ではこの2つを分離して捉えること前提としていますが(刑が終われば放免される)、被害者側としては、どうしても「あいつがやった」という情動から逃れられないですからね」 🎸「なるほどなあ。『行為』と『人格』。うんうん。立場って何にも優先するのか、感情というより『情動』なのでしょうが、そこに冷静も無ければ損得も無い中でどんな未来を見据えるのかはたまた見据えないのか。そういう事を敢えて主観的に描き客観的に捉える、という事に成功している書き出しですよね。うーんマジ面白いw」 🛶「そういう深読みって本当に楽しいですからね」 🎸「この導入部分で、何となく諦念というか「人であること」の本質を読ませる物語である事が、読者に伝わる気がするのです。えっ、この人の人生って、どんな道を辿ったの?っていう惹き込まれ方をさせる、絶妙の書き出しだと思いました。」 「他にはどんな作品がありますか?」 🎸「次の作品は、池田春哉さんの『5分間だけ、世界滅亡の話をしませんか?』です。これが書き出しというか、小説のタイトルにもなっているんです。この言葉、名言だと思います。続き読まな意味分からんやん!って思いますw」 🛶「冒頭を疑問形にして相手に問い掛ける手法は、プレゼンの世界で使われるテクニックですね。例えば「想像して欲しい。今ここに1枚のコインがあるとして、それは表を向いているだろうか? それとも裏だろうか」みたいに相手の心に考えさせることでより能動的に相手の心を動かすんです。頻繁に使うと飽きられるという弱点もありますが、隙を突かれると見事にもっていかれる技だと思います」 🎸「本当に短い作品なんですが、興味をぐっと持ってかれました。そこからあれよあれよと言う間に切ない方向に気持ちを持ってかれる作品なんですが、とにかく吸われるような勢い作品に真正面を向かされたような冒頭の一言だと思った作品です」 🛶「それ「5分で語れる話題なのか?」と相手を食いつかせる。素晴らしいの一言ですね。流石は池田春哉さんですね!」 さて盛り上がる冒頭シリーズは次回も続きます!
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