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トコダトコさん ④冒頭その4 『輸涙』
トコダトコさんDM対談、今回はその7回目です。
妄想コンではときとして「え?!」という名作が選から漏れることがあります。まあ、理由は色々あるのでしょうが、それらの作品の価値自体が損なわれるものではありません。
今回はその最たる例である、『輸涙』という、血液が透明になっていくという架空の病気をテーマにした作品について話をしたいと思います。
🎸「台詞から始まる小説なら、これも推したいなあ。
☆
「血も涙もないのが悪魔なら、涙があっても血はないのは何なんだろうね」
☆
池田春哉さんの「輸涙」という超名作です。これはもうね、登場人物が語る一言ひとことが軽くて重い、そして切ないって小説なんですが、もう冒頭からこういう意味深な語りから始まる訳ですから、感動作に始めからどっぷり入り込んじゃう訳ですわw」
🛶「この作品は凄い。本当に凄い。己の生命の有限性というものと真っ向から向き合った人間にしか書けない、読み抜けない傑作だと思います。何故かシイタケ(受賞エンブレム)がないんですが」
🎸「近年稀に見る名作だと思うんですけど」
🛶「恐らくそれは共感性の問題だと。池田さんやイノウエ佐久さんのような『達人』はときとして読み手に迎合することなく『着いてこられるヤツだけ着いてこれればそれでいい』と割り切ってしまうことがあるんですよね。この作品はその極地にあると思います」
🎸「潜さんの考察、大きく頷いております。冒頭の秀逸さは既に語ったところなのでその通りなんですが、クライマックスの「きが、ききすぎだよ」の刺さり方と言ったらもう」
🛶「作者としては、この『きが、ききすぎ』にどう持っていくのかに勝負を掛けていたのだと推察します。『気が利く」とは、相手が何も言わなくても相手の要求を不足なく提供することにあります。だが読み過ぎるのもよくない。ときとして『相手に見透かされているようで嫌だ』という嫌悪感を抱かせるから」
🎸「『きが、ききすすぎ』という十字にも満たないこの言葉の裏にあるものを感じた時、この物語の奥行きさえも変わるのではないかと思うんです」
🛶「ラストであえて、ヒロインの隠された心の裡に踏み込むことで『ききすぎ』と言わせる。そして、それを活かすために冒頭で『気が利くねぇ』というセリフを多用する。見事の一言です」
🎸「選者に刺さらなかったのは、その上辺を滑るように読んだんじゃないかな、なんて思うくらい、この深さは分からないと面白みが無いお話だなと思います」
🛶「多分そうだと思います。これで一本映画が撮れるほどの分厚さがあるかと。ところで、今思ったことがあります。これはね、DM対談で正解でしたよ。そうしないとこれ、何時間あっても絶対に足りないですから」
🎸「正直言ってまだまだあるんですが、このくらいにしておきますwあと15は書きたいのありましたw」
🛶「それは凄い! 聞けるものは全てお聞きしたいとは思います。多分、書き手さんにとっても非常に興味がある内容ですから。ならばまた何処かで「第二弾」をやるというのは。残り15は、そのときに使いましょう←勝手に開催決定している」
🎸「やばいめっちゃ面白い! 永遠に続けましょうwww」
🛶「冒頭というと私はイノウエ佐久さんの『お八の時間』を推したいです。冒頭を鬼のリサーチで練り上げた擬音は圧巻でした」
🎸「せっかく良い機会なので私の中でこの一年で最も刺さった短編三作品をあげようかな。
池田春哉さん「輸涙」
青のキカさん「夏々風葬」
ゆきはるさん「ヤギたちのナリワイ」
この三作全て、8000字〜15000字くらいで描かれた短編なんですが、正直言って私がどんなに頑張っても手が届かないくらい高いステージで創作されてるなーと感じた、名作中の名作だと思ってます。
沢山の人にオススメしたい短編です」
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