トコダトコさん第二部 テンポ①

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トコダトコさん第二部 テンポ①

諸般の事情がありまして間の空いた対談なのですが、双方ともに再開で合意できたので、無理のない程度でゆっくりと取材を再開しました。 頭が疲れないようにと、無駄話を混ぜながら……7割以上はオフレコの無駄話でしたが。 それでは、第二部をお楽しみくださいませ。 🎸「えーと、二ヶ月強も質問にお答えせずにぶっちぎってしまいましたすみませんっ」 🚤「いえいえ、とんでもないです。何しろ大変だったですから。さて前回はトコダ的、テンポとは何ぞや? ということろだったかと」 🎸「小説作品のテンポというと、文章の「軽快さ」や「読みやすさ」のようなイメージで語られることが多いんじゃないかと思います」 🚤「確かに、リーダービリティがいいとか」 🎸「でもこれらはリズムであり、ちょっと混同しそうですが私の言いたいテンポはその規則的な拍子という意味ではなく、むしろその作品を象る文章と、その文章の「らしさ」のある速さ、みたいなものを指してます。」 🚤「その作品らしさに合っている、これは大事ですね」 🎸「なので軽快でもなく読みづらい文章でもその作品らしい速度の文章で編まれている場合、私は悶絶するほど気持ち良い読後感を得られたりします」 🚤「読者が想像するテンポと、実際のテンポとの合致でしょうか」 🎸「特徴的な二例を挙げたいです」 🚤「お願いします」 🎸「逆木サカさんの「さよならデイジーチェイン」この作品は恋愛小説ですが、王道の恋愛小説の裏拍子のようなリズムの作品で、そのテンポは独特の「鈍さ」のある速度を持った文章で編まれています」 🎸「痺れるエモさの最終ページが効いたのは、主人公の生き方が描かれているそれまでのページ、文章のテンポがずっと独特で、彼女の生き様そのもののように感じたからなのだと思いました」 🚤「とりま、逆木作品はお初なのですが、とって付けたような描写を貼り付けるのではなく世界観そのものとマッチした語り口が素晴らしいです」 🎸「次がゆるさないさんの「想いを繋げ、カムチャッカ」」 🚤「おお、帝王ですね。最近はXで寿司のポストしか見ませんが、それはともかく」 🎸「独白コメディの傑作ですが、これ程までにクドいテンポの作品はなかなか無いですw(褒めてます!)回りくどさや面倒臭さが滲むように、提起・高揚・サゲ、それぞれがある身勝手なテンポのページを「組曲」のように縫い付けた構成で、その速度がクセになる面白さを連れてきます。 🚤「カムチャツカは、途中途中でドスンと落とすことで読みやすい構造になっていると思いますね」 🎸「中毒性ある繰り返しからお見事な落ちで終わる小説ですが、そのテンポが永遠に続くんじゃないかと錯覚を感じてしまうような小説でした」 🎸「もうひとつ。冒頭の良い作品でも挙げていますが、澤檸檬さんの「毒林檎もどきオオトカゲ」をこのパートでも挙げたいですね。これはお手軽なサイズのミステリ小説ですが、これは本当に面白かったです」 🎸「前半はライトなテンポで語られていきますが、しっかり謎を蒔いており、後半の究明パートと描かれる真相は不規則なリズムの文章が焦りを感じさせるローテンポで描かれていきます。テンポで魅せている、お手本のような名作だと思いました」 🚤「テンポ、確かにリズムと混同しやすいですね。らしさのある速さ、例えばデイジーでは過去に囚われるアンニュイな重さ、ゆっくりさみたいなものを指していると理解していいでしょうかね」 🚤「逆にこれが上手く行ってないと、明るい話なのにべったりとした表現が続いたりとか。または重い話なのにやたらスピディーで、B級ホラーか! みたいな感じになるとか。そういうイメージと考えていいですか?」 🎸「あー!そうですそうです。めっちゃ例えが上手い!w 明るいのにべったり、重いのにスピーディーでB級ホラーか!はまじ言い得て妙!←違 そうそうそういう事なんです」 🎸「デイジーチェイン」で言えば、アンニュイな重さっていうのがいいですね。そんな感じです。これは絶対16ビートじゃないですもんw 「チェイン」というダブルミーニングがある作品ですが、その両方の意味で重みがあり、そんなテンポでないと表現できない作品だと思うのです」
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