トコダトコさん第二部 ギリギリの共存

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トコダトコさん第二部 ギリギリの共存

※本内容はイジンサンアルデンテに関するネタバレを含みます。 🚢「以前にトコさんの『カササギの本望』を読ませて頂いたときだったと思うんですが、トコさんが言われた『あれはギリギリの共存というテーマを表現したくて』という発想があまりに斬新すぎて。かつ、今にして思うとイジンサンアルデンテの時点から『それ』が表現されているんですよね」 🛳「自身の両親を殺した相手と普通に生活する幼い主人公。殺人と誘拐に罪悪感の薄いイジンサン。主人公は両親から離れる口実を得て、イジンサンは主人公の面倒をみるという口実での生活。ここに奇妙な相互依存が見て取れるわけで。この構造が計算されたものだということに中々気付けない」 🎸「イジンサン、アルデンテ」でいうと、登場人物、少女・イジンサン・母・父。全員なんかもう普通じゃなくって、つまりキマってる奴らなんですよねwサスペンスホラーな世界観の作品に振り切るにはちょうどよかったという」 🚢「確かに私ら社会人経験が長いと『ギリギリの共存』を実体感するんですよ。例えば職場の同僚って『仲間』のイメージですけど、実際には年齢・勤続年数や配属年数・出身学校・俸給・役職・部署・結婚や子供の有無といった『世間的格差』とか、職場における立場の違いによる対立や出世を巡る敵だったりするんです。或いは同じ人間を相手にした恋敵だったりとか」 🚢「そういうドロっドロの敵対関係要素満載の中で、それでも表面的には『仲間』として信頼していかないと仕事が進まない。まさに社会人は『ギリギリの共存』なんすわ」 🛳「しかし小説でそういう相互矛盾を抱えた人間模様を描くというパターンは珍しいと思うんです。何故なら読んでいてキャラの立ち位置が分かりにくいから。でも現実の人間関係って間違いなく、そういう『ギリギリの共存』なんですよね。そこを剥き出すという発想が凄いなと」 🛳「しかもトコさんの年齢でそういう発想が自然に出てくるというのが凄いというか、疑問というか。ある程度実体験がないと、あったとしてもそれを頭で言語化できないと、そういう発想は生まれてこないんじゃないかと」 🎸「なるほど。そういう観点でいくと、私は若くしてそういう境遇の体感はしている方なのでしょうねえ」 🚢「と、いいますと」 🎸「単純に「好み」って言ってしまうとお話が終わっちゃうので、まあ振り返ってみると大まかには理由は三つかな、と。 一つ目は、小・中学生の時は母親が読み終わった小説や漫画本を読む事が多く、綿矢りささん、野沢尚さん、浅野いにおさん、浦沢直樹さんの作品を多く読んだからかな、と思います。 どの方もジャンルは違いますが、どの作品も「際に立つ人間の危うさ」や「ギリギリに生き場を保つ」という部分を生々しく鋭利に描かれていて、それらに大きく影響を受けた気がします」 🛳「確かに浦沢直樹さんはもろにそれですからね。戦地で地雷を踏んでいるもの同士が銃を向け合うとか」 🎸「二つ目は、スポーツの世界の裏の部分、陰湿性に触れたからだと思います。 岩手県の選抜エリートキッズに選ばれ小学生の時からアスリート生活をしてきまして、やはりそうなるとスポーツの世界は「楽しい」だけではやっていけないのだと身を持って知りました。勿論素晴らしい選手や指導者、素敵な経験もたくさんしましたが、元来リアは陰キャな私の性格上あまり人間関係は上手くいきませんでした。 追い詰められる人間の生々しさには沢山触れましたし、トラブルも多かったです。そこで知った事も、なんとなく創作に生きていると思っています」 🛳「例え子どもでもあっても、アスリート同士の話もドロりそうですね。友達でありながら蹴落とす相手というドロドロの関係ですし」 🎸「あー、トップ選手達ってもうアレは目がイッてますね。特に青少年期のスポーツ選手は。大人になって正気になるんでしょうかね。でも大人のトップ選手も大概かw」 🛳「プロ野球でも、ポジションが重なる選手の不調は嬉しいとかあるとか聞きますしね。自分の出番が増えるから」 🎸「(そうした境遇を)恨んだりしてる訳ではなく「こういう人もいるよな」みたいな感じで捉えるタイプではありますが、その「こういう人」が「どうしてそうなるか」をちょっと妄想するのは楽しいですw 🎸「「私に敵わないからってこういうチンケな意地悪するよねーしょーもな!w」とか、「ガキだと思ってマウントとったと思ってるだろうけど、周りにてめえが浅い奴ってバレてるやつそれw」とかw」 🎸「うまく言えないですけど、俯瞰的・客観的にそういうギリギリの人を見ると滑稽で何しでかすと分かんない、みたいな面白さがあるというかw」 🛳「うーむ。そういう複雑な人間関係の体現が、ああいうキャラの『ギリギリの共存』になるんでしょうね」
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