霜月奇譚

Day.10 水中花

訳あって、生まれてすぐに死ぬところだった。命拾いしたものの、経過観察の病院通いが十歳まで続いた。検査後に立ち寄る院内食堂のテーブルには、造花と水が入ったインスタント珈琲の瓶が置かれていて、幼心に奇妙なものだと思っていた。今でも水中花を目にすると、あの食堂を思い出す。