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(慣らす……?)
額に張りついた瑞希の髪を優しく払いのけてそう言った康弘からは、先ほどまでの意地悪さが消えているように感じた。瑞希が戸惑いがちに彼を見ると、柔らかく微笑んで手を繋いでくれる。
そのまま体をぴったりと重ねて、キスを交わす。彼は何度か啄むだけのキスを繰り返し、ゆっくりと口の中に舌をいれてきた。
「ふ、っ……」
手を繋いだままお互いの舌を絡め合う。そうしてキスに没頭していると、下腹部を中心に自分以外の熱がじんわりと広がっていく。
「ん、んんぅ……」
(康弘さんの、熱い……)
瑞希が目を伏せると、康弘が次は胸に触れた。キスをしながら胸の先端を指で捏ねられると、徐々に違う感覚が生まれる。彼を受け入れているところが、じんわり痺れてきてなんだかうずうずしてくるのだ。
「あっ! それ、ん……ふ……ぁっ」
瑞希が繋いでいる右手に力を込めると、ゆっくりと唇が離れていく。
馴染むまで動かないようにいてくれる彼の配慮は嬉しい。だが、少し変な感じがして瑞希は困ったように彼を見た。
「もう苦しくないですか?」
「は、はい。むしろ……康弘さんが入ってるところがじんじんして、きて……今すごく動いてほしい、変な気分に……なりました」
恥ずかしいが気遣ってくれている彼に今の体の状態を頑張って伝えると、一瞬彼が固まった。
瑞希の肩に額を押さえつけて小さく震えだした康弘にどうしたんだろうと思い、彼の背中をさすりながら名を呼ぶ。すると、体を起こした康弘の目に体がぞくりと震えた。
情欲の色に染まりきった獣のような目だった――
「やす、ひろ……さん?」
「それわざとですか?」
「わざと? 何がですか? ひゃっ、そ、そこ触っちゃ……ああっ!」
彼の言ってることの意味が分からなくてキョトンとした時、康弘が花芽に愛液を塗りつけた。そこからまた甘い痺れが広がってくる。
(ま、まだそこ、すごく敏感なのに……!)
「っはぁ、やっ、そこだめっ、あっ……ふぅ、っひゃぁ!」
康弘は花芽を捏ねながら、ずんっと奥を穿った。突然の大きな刺激に目の前に火花が散る。
「ああぁっ! きゅ、急に、強い……っ」
動いてと言ったのは自分だが、なぜ彼が箍が外れたように激しさを増したのか分からなかった。恥骨の裏を雁首で擦り上げられ抉るように穿たれると腰が浮く。すると、すかさず彼が胸の先端に吸いついた。
「ああっ、駄目っ、そこ吸っちゃ、ああっ!」
慌てて胸を舐めている彼の頭を押すと、意地悪そうな目に射貫かれる。彼は瑞希のことを見ながら舌先で胸の先端を転がし、戯れに甘く歯を立てた。下のほうでは花芽を嬲りながら、奥をぐりぐりと突き上げる。
(やっ、何これ……ぜ、ぜんぶ、気持ちいっ)
先ほどまでの圧迫感が嘘のように、康弘が腰を動かすたびに愛液があふれてシーツを濡らした。
「やはり瑞希は胸が好きですね」
「ひうぅ……ちが、う……っぁ」
「違わないでしょう。嘘はいけませんよ」
「あぁっ……!」
罰とばかりに脚を大きく開かされ体重をかけて奥まで抉られる。強すぎる快感に康弘の腕を力一杯掴んで耐えるが、彼は容赦なく瑞希の中を掻き回した。
「あっ……あぁっ……待っ、ふぅ、んあぁっ」
「慣れてきたようですね」
ニヤリと笑った瞬間、ギリギリまで引き抜かれて一気に奥まで穿たれる。あまりの衝撃に目を大きく見開いて、掴んでいた康弘の腕に爪を立てた。頭の中が白く染まって、目がちかちかする。
「――っ!」
だが彼は腰を止めずに、胸の先端と花芽も同時に嬲ってくる。
「ああ……ひう、あっ……やだ、やっ、全部だめぇ」
「瑞希の駄目は『好き』ですね。もっとしましょうか」
クスクスと揶揄うように笑いながら、胸の先端を摘まれて腰がガクガクした。
「ち、違うの……ほ、ほんと……に、駄目……これ駄目なの……」
康弘が胸と花芽を弄りながら小刻みに腰を揺すると、甘い痺れが全身を支配していくような感覚に陥る。瑞希は何度も首を横に振った。
「何が駄目なんですか? 気持ちいいから?」
「はうっ、ぅう、ふぁ……やっ、それやあっ!」
吐息混じりに耳元で囁かれて大きなストロークで穿たれると、わけが分からなくなる。瑞希は康弘にぎゅっとしがみついた。
「もうやだ……体変なの。気持ちよすぎて怖い……」
瑞希が泣きだすと康弘が動きを止めた。ぎゅっと抱き締めて、いやいやと駄々を捏ねる瑞希の髪に指を差し込み、宥めるようにキスをしてくれる。
「怖がる必要はありません。いっぱい気持ち良くなっていいんですよ」
「でも、ぜ、全部一緒は……気持ちよすぎて、駄目なんです。一つだけにして……?」
縋るように彼を見ると、額にキスが落ちてくる。彼は何かに耐えるような顔をしたあと、困ったように笑った。
「瑞希は俺を煽るのが上手ですね。泣かせたくないはずのに、たくさん啼かせてぐちゃぐちゃに泣かせてやりたくもなる」
「え……え?」
(泣かせたくないのに泣かせたくなる?)
泣かせるという言葉がいっぱい出てきて、軽く混乱する。瑞希が戸惑っていると、彼がフッと笑った。
「一つなら選ぶまでもありませんね」
「え、ひゃあぁっ!」
意味を理解する間もなく康弘が上体を起こしたのと同時に、入り口から奥まで一気に穿たれた。先ほどよりも激しい腰の動きに、シーツをぎゅっと掴む。
彼はたまに瑞希を宥めるように優しくキスをしてくれるが、瑞希の腰を掴み揺さぶりながら、中を抉る。
「ふぁっ、あっ、やっ、待って、イッちゃう、イッちゃうの……あっ、ああ――っ!」
熱い昂りが容赦なくずぶずぶと押し入ってくる。最奥を穿たれた瞬間、累積された性的緊張が一気に弾けた。
――意識が落ちる瞬間、寝室の窓から朝焼けの空が見えた気がした。
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