ゼロキョリの春

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 幼なじみに恋をするなんて、思いもしなかった。  小さい頃から家が隣で、何をするのも一緒。家族ぐるみの付き合いだから、旅行だってキャンプだって、温泉だって一緒に入っていたらしい。  もちろん小中高と同じ学校で、共有するアオハルにはお互いがデデンと居座っている。 「ルナ、入るぞ」  言いながらもう入っているし。 「智樹(ともき)さ、ノックぐらいしてよね……着替えてたらアウトでしょう?」 「いいじゃん、ルナの裸なんてガキの頃から見てるし。変わり映えしないよな」  そんな笑顔で、心とボディを抉るセリフなんか言わないでよ。私はまだまだ発展途上中なんだから。  私の隣にドカリと座った智樹をそっと観察する。後頭部左下辺りの髪が跳ねているのを発見した。 「寝癖?彼女に嫌われるからちゃんと梳かしなよ」  言いながら手櫛で髪を直してあげる私のハートは、ただいま急上昇している。幼なじみだから許される私と智樹のゼロキョリ感は、智樹に彼女ができても変らない、今のところは。  智樹はずっと私の隣に居てくれる、勝手にそう思っていたから好きだと自覚するのが遅すぎた。  そう、今はもうゼロキョリであってゼロキョリじゃない。  お互いにどこか遠慮していた。  
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