不幸ヤンキー、”狼”に興味を持つ。【4】

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不幸ヤンキー、”狼”に興味を持つ。【4】

『取材が終わった。…もう控室に来ても大丈夫だ!』  撫子から連絡を受けた幸は足を崩して涙目になっている哉太へ言い放った。 「哉太さん。…足が痛いのは分かるけどから取材が終わったっていう連絡貰ったから行くぞ~?」 「えっ、なんで撫子の連絡先知ってんの?」 「いやなんでもって…交換したからだけど…」  幸の言葉に哉太はひどく驚いたので彼は不思議そうな表情を見せる。すると哉太は拳を握ってはサングラス越しに輝く真紅の瞳をメラメラと燃え上がらせたのだ。 「…あのヤロー…俺の愛しの花ちゃんの連絡先を―」 「ついでに躑躅(つつじ)さんの連絡先も知ってるけど?」 「なんで知ってんの!!?」 「まぁまぁそれは良いから。早く行こーぜ?」  実兄ではあるが躑躅(つつじ)の連絡先も知っている愛しい恋人、幸へ哉太は子供のように頬を膨らませては拗ねそうになった。そんな子供らしい哉太に幸は軽く微笑んだ。 「早く行くぞ、哉太さん?」 「う~ん…なんだろう。この煮え切らない思いは…?」  控室へと歩を進める2人ではあるが哉太は思い出したように幸に問い掛けたのだ。 「そうだ。…花ちゃんさ~、最近勉強とかしてんの?」 「なんだよ…急に?」  突然の問い掛けに幸が戸惑うと哉太は嬉々とした表情で尋ねてくる。 「いやさ~、ちょっと語彙力も上がってきてる気がするし、言葉に迷いが無いというかね~。…あと、最近バイト減らしてんのも知ってるし~?」  哉太が腕を後ろに組みながら問い掛けると、当たっていたようだ。幸は少し将来を見据えたような目をして自身の想いを彼に伝えた。 「…大学に行きたいなって思ってさ」 「お~、それはまたどういった経緯で?」 「えっと…。哉太さんと出会ってから男同士だと何かと都合が悪いかなって思ってさ。それに俺」  ―哉太さんと釣り合うような人間になりたいんだ。 「…花ちゃん」 「それで始めた勉強だけど…、やってみたら意外と楽しくてさ。…でもバレていたのは、ちょっと恥ずかしい…かも」  そして顔を紅潮させては逸らしそうになる天邪鬼で素直になれない恋人に…哉太は激しいを感じてしまう。  …花ちゃん、すっごい健気で純粋やん!  だがそんなことを言ってしまえば、さらに幸が恥ずかしさのあまり拗ねそうになるので発言は控えておいた。だからわざと差し(さわ)りのない言葉を選ぶ。 「ふ~ん。それは嬉しい限りだけど…誰に教えてもらってんの~。もしかしてあのじゃないよね?」 「フライとかジュジュちゃんとかだけど?」 「いや、なんでよ!!?」  その言葉だけは突っ込むのだ。 「あのもやしに勉強で負けたの、俺!!?」 「いや、負けたもなにも…」 「…ムカつくから今度は俺が教えるから。あの白髪もやしは絶対、駄目!」  しかし再び幸は不思議そうな顔をする。当たり前だがフライとは親友程度の関係だと割り切っているからだ。…勝手に闘気を燃やしてライバル視している哉太はともかく。 「なんでだよ。教え方上手いぞ~フライは。…ジュジュちゃんもだけど」 「腹立つ~ムカつく~!!!」  哉太が愉快に怒り散らしているのを幸が見てみれば…どこか視線を感じその視線を見てみた。  ―その先には少し風変わりな髪をした少女が哉太と幸の姿を見ていたのである。その目が死んでるような、人形に見られているような視線に、幸が失礼も承知で臆してしまった。  …なんだろうこの子。なんか…魂が抜けてる”人形”みたい…だな。  するとその少女は目を伏せて悲しげな表情をしたのだ。自分が不躾に見てしまったから気を悪くしてしまったのだと幸が謝罪しようとすれば…今度は隣に居た眼鏡を掛けている男性が少女に声を掛ける。 「行くぞ、心。この後もスケジュール詰まってんだから」  すると少女は男性に振り向いて頷いた。 「…うん、分かったよ。…お父さん」  男性に連れられてどこかに去る2人に幸はホッとひと息を吐くのであった。  控室に行けば撫子と躑躅(つつじ)がどこか話し込んでいる様子であった。だが幸と哉太が入室すると、撫子が興奮した様子で哉太に駆け寄るのだ。 「おお~、彼岸花に場磁石!!!」 「な…なに? いつもより豪快になってさ」  普段よりも笑みを零す撫子に哉太が面倒な表情を見せると、彼は彼の肩を強く叩いては嬉々としていた。 「良いネタが入ったんだ~。聞いてくれるか!!?」 「…うっさい撫子。顔も言動も何もかもがうるさい。…躑躅(つつじ)もなんか言ってよ~」  哉太の苦言に躑躅(つつじ)は苦笑いを見せながら言い放った。 「まぁまぁ。でも…もしかしたら、本当にビックニュースになるかもしれないんだよ」 「どういうこと?」 「…僕達の話、聞いてくれる?」  いつにもなく聞いて欲しそうな実兄の問い掛けに、哉太や幸が興味を示せば…2人は先ほどの取材の話をするのであった。
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