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【閑話休題】不幸ヤンキー、”狼”に躾けられる。《前編》
―金曜日。幸の家にて。
来週は哉太や麗永、そして撫子の母校である大学のオープンキャンパスへ行くことになった幸は、現在スマホで調べている様子だ。そして真面目な顔して原稿を書いている哉太に話し掛けるのだが…。
「ふーん…。こういう所かぁ~…って、偏差値高くね!?」
「え~、そう?」
「…俺がこんなとこ入れる訳ないじゃん!」
異様な偏差値の高さに驚愕をする幸に哉太はパソコンと向き合っていたが視線を外して幸を見てみる。案の定、幸は顔を青ざめていた。
哉太にとっては普通くらいに感じられるのだが、世間一般に見てもその大学は異様に偏差値は高い。さすが、彼の友人で刑事をしている麗永と難関だと言われている編集者になった撫子である。
そんな大学に恐れ慄く幸に哉太は間延びした様子で話して励ますのだ。
「目標は高い方が良いじゃ~ん。それに塞翁が馬って言葉があるくらいなんだよ? …今は無理かもしれないけど、入れるかもしれないじゃん~」
「サイオウガ…ウマ? …あっ、どう転ぶか分からないって意味だ!」
「正解~」
「良かった~。フライに教えてもらったことが覚えてて!」
幸の嬉しそうな声に哉太も微笑むが、やはりムカつくのは幸の親友で…。
「伸びしろがあるってことは良いことだよ~…あのクソもやしチビ助が教えてんのはムカつくけどね」
そして哉太は原稿を一旦辞めて休憩に入ろうとすれば、幸は思い出すような言葉を発する。
「そういえば…。オープンキャンパスも初めてだけど…俺、彼女居たことなかったから…哉太さんが初めての恋人だな~」
―――パッタン!
幸の言葉に哉太はパソコンの画面を強く閉めて幸の方へ向く。その反応に驚く幸ではあるが何にも気にせずに哉太はデリカシーの無いことを聞いてくるのだ。
「え、じゃあさ。キスしたのも、エッチしたのも??」
「ま…まぁ、そうだな」
ド直球な哉太の問い掛けに羞恥心はありつつもちゃんと答えれば、哉太は嬉々とした表情を見せていた。だからこんなことまで尋ねてくる。
「じゃあじゃあ、エッチの最中のあ~んなことや、こ~んなことをしたのも…俺が初めて?」
「…あんなことやこんなこと? それはどういう―」
「まぁ例えるなら…エッチな下着履いて俺と恥ずかしいキスしながらせがんでくる花ちゃんが俺とエッチを―」
「分かった、もういいから! …まぁ、それも…ハジメテ…です」
「うぉっしゃ~!!!」
恥ずかしそうに頷く幸に哉太は立ち上がって雄叫びを上げている。さすがに夜なので声は抑えてはいるが、真紅の燃えるような瞳がさらに燃え上がるような感覚を幸はある思いを抱いてしまった。
―しかしそんな幸はとんでもない失態を犯してしまったのである。
「ということは俺、どーてい卒業は無理か」
「……はっ?」
「したかったなぁ~。さすがに男としては―」
「…なに言ってんの。幸?」
一気に冷め切った声色に幸がビクつき哉太の方を見た途端、彼は幸に覆い被さってから手を一回叩いて能力を発動させた。そして幸の両腕を床と密着させるのだ。
―――ドタンッ!!!
「なっ…なに…かなた…さん?」
驚く幸に哉太は先ほどの楽しげな炎のような瞳ではなく、罪人を戒めるような冷たい炎へと化していた。
…え、俺。そんなにやばい発言しちゃった…?
喉元から声が出てしまいそうな感覚に陥る幸に哉太は不気味なほどにっこりと微笑んで問い掛ける。
「幸はさ~…俺以外の奴とセックスしたいの?」
「えっと…なにを言って―」
―――パンパンパンッッ!!!
いきなり両手を叩いた哉太に再び驚けば今度は自身の局部に何か震えが来る感じがした。
…なんか股間が、ジンジンする…。
「うぁっ…なに、コレ…?」
身体を捩られせて顔を赤らめては迫り来る振動に耐えられずに涙が出そうになる幸へ哉太は分かっているような笑みを浮かばせた。
そして悶絶する幸の顎を取っては怒るように問い掛けたのだ。
「だってそうでしょ。…童貞卒業したいってことは、その辺の女とヤリたいってことでしょ?」
「ちが…そういう意味じゃなく…て―」
「俺のイヌのくせに?」
「だから…違うって」
「恋人のくせになにを言っているのかな~。早漏君の幸君は。だから―」
―お仕置きしてあげる。
哉太の”嫉妬”という炎に燃え上がらせて輝く真紅に捕えられたおかげで、幸は声が出ないほど身体が硬直した。
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