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不幸ヤンキー、"狼"に魅了される。【2】
フライが心と心司に出会い何かを渡されたので見てみると…そこには地図が書かれていた。しかもメッセージも添えられてもいる。
『救われたいと願うのなら14時に学生ホールへ…。囲戸 心司』
半端脅しのメッセージに哉太は溜息を吐いた。
「脅迫みたいなもんじゃん。…しかも自信たっぷりみたいだし?」
「救われたい…か」
「…そんなに自信があるとはね~?」
なにかを考える哉太ではあるがフライは興味を持ったようだ。しかもフライはその少女、囲戸 心を知っている様子であった。
「でもあの有名な囲戸 心ちゃんに過去を見てもらって…救済してもらうおうかな~。興味あるし!」
「お前、あの子知っていたのか…」
「だってネットでは話題なんだよ~。”過去が見える”って」
「ふ~ん…」
…本当にネットニュースとか見なきゃな、俺。
少々自分自身のニュースの見なさに落胆しつつも彼はフライに問い掛けるのだ。
「じゃあフライは行くってことか?」
「そうだね~。あの子、多数の有名人の過去を見ては話題を呼んでるんだよ~!」
「へぇ~…それは凄いな…」
するとフライは彼女について語り出すのだ。
「過去を見てもらったおかげで正直に話せるようになったとか、逆に良い行いをしてきたことで株が上がって仕事が舞い込んできたとか、恋人が出来た…とか!」
「そりゃまた凄いな…」
御利益がありそうな少女だなとは感じつつも幸は忘れられない。あの人形のような何も映していない瞳を。だからそういう風に見えてしまった自分はおかしいのではないかと考えを改めようとした。
だがフライの話は止まらない…と思われたが。
「これに便乗をして―」
「便乗して彼女を作ると?」
「なっ!??」
ニヤつく哉太の問い掛けにフライは顔を赤らめる。すると今度は少し寂しそうなスピードの姿があった。
スピードのその姿に哉太はちょっかいを掛けるのだ。
「なにスピードは悲しい顔してんの~。…嫌だな~って思ったんだ~!」
「ちっ、違いますよ、場磁石様! …俺は…その…フライ先輩に彼女が出来たら…その、構ってくれないかな…とか思ってしまって」
「それ全然違う理由になってないじゃ~ん?」
「そんなことは…」
「つまりスピードはこのクソもやし君を先輩としてではなく、ラブとしての―」
「もうやめましょうっ!」
その言葉にスピードははぐらかすように話題を逸らした。
「…俺は理工学部に興味があるんですけど、皆さんはどこか行きたいところありますか?」
話をぎこちなく逸らしたスピードではあるが、後輩としてでしか見ていないフライ。そんな彼はフライの意見に便乗させる。
「あっ、僕も理工学部行きたいな~。一緒に回ろうよ!」
「はっ、はい! …喜んで」
どこか嬉しそうなスピードにフライは不思議に思うが気づかずにいる。そんな彼らを見て哉太は幸の肩を抱いてから発言する。
「そんじゃあ俺たちは2人で学部見てみるから~!」
「またさっちゃんを独り占めに―」
「いやいや~、今回は俺たちはお邪魔虫だからね~?」
哉太が幸に向けてウィンクをすれば、幸はなにかを勘付いたようで哉太の言葉に合わせる。
「そうだな~。俺もどこの学部行きたいとか分かってないし。…まあ、フライとスピードは自分たちの進路が分かってるんなら2人で行った方が良いじゃないか?」
「え~、さっちゃんも行こうよ~!」
「俺が理系になんか行けないからな。…哉太さんと見て回るから、お前はスピードと行ってこい」
「ちぇっ…なんだよ~まったく~」
半分は本当なので幸が答えれば、フライはいじけた様子でスピードと共に理系の学部へと足を運んだ。見送る哉太と幸ではあるが2人の姿が見えなくなってから哉太は溜息を吐く。
「はぁ~疲れた…。あの小姑、なんでいつも花ちゃん重視なのよ…。もう花ちゃんにしか目に行ってないよね」
「まあ…そう言われてみればな~?」
「言われてみればって…」
疲弊している哉太に対し笑い掛けながらも幸は持論を出す。
「本人は…フライは俺の友達で親友だからって理由で俺のことをよく見てくれるというか…まぁ、フライは俺の理解者だしな~」
「ふぅ~ん。じゃあ俺は”恋人”としての花ちゃんの理解者?」
拗ねたような発言をする哉太に幸は恥ずかしさもあったがまっすぐな言葉で断言する。
「そうだよ。哉太さんは”恋人”で理解者だよ」
その言葉に哉太は少々驚いてから嬉しそうに笑って幸の手を握った。
「じゃあ行きますか。…花ちゃん?」
「……お、おう」
そして2人は仲良く文系方面の出し物を見に行くのであった。
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