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不幸ヤンキー、”狼”に魅了される。《前編》
学部の出し物を見ながら、哉太は再度深い溜息を吐いた。溜息の相手は幸ではなく彼の親友気取り(*親友ではあるが)をしているフライことである。
「それにしては異常だよ、なんなのアイツ?」
「まぁまぁ」
歩きながら出店でクレープやらリンゴ飴を食す哉太とフリフリポテトを片手に持っている幸。そんな彼らの今の話題は…幸を親友としても大好きだが、スピードの気持ちを汲み取れないスピードの恋模様についてだ。
苺クレープを食しながら哉太はげんなりとした様子で話す。
「果たしてスピードはあの花ちゃん大好き人間のクソもやしを射止められるのかね~?」
「どうなんだろうな~?」
するとポテトを食しながらレモネードを飲む幸がフライについて話していく。
「フライって結構現実主義だし、普通に女の子が好きだから難しいかもだけど…でも、頑張って欲しいな~」
「頑張ってもらわないと困るよ~。あの小姑め」
「ははっ」
面倒な顔を見せる哉太に幸は軽く笑う。
―するとある露店を目にした。サークルだとは思うが花を売っている変わった露店である。しかも売っているのは外国人…国籍は分からないが金髪に碧眼に肌が白い青年であった。その青年は花を選定しながら売りに行っていた。なんとなく見つめる幸の視線に気づいたのか、金髪の青年が声を掛けたのだ。
「Hi! Are you intererted in flowers? (やあ! 花に興味を持ってるのかい?)」
気軽に話し掛けてくれた青年に幸は驚くものの、目に留まった3本の花を見て頷く。
「Yeah. Could you tell me the name of them? They are verry nice!(うん。俺にこの花たちの名前を教えてくれない? 素敵だからさ!)」
流暢に話す幸に青年が驚けば彼は笑って3本の花を左側から1本ずつ教えていった。水色の儚げな花はディルフィニウムで鮮やかなピンクの花はアルストロメリア、そしてほどよい紫色の花はストックと呼ばれる花らしい。
「へぇ~…Thank you.」
教えてもらった幸は英語で感謝を述べると聞いていた哉太がその3本を見て笑い掛けた。
「それ3本ずつアレンジしてちょうだいな~!」
驚く幸に哉太は財布を出して花を購入する。すると青年はアレンジをしたブーケの花束を哉太に渡したのだ。そして哉太はサングラス越しで笑う。
「サンキュー! ありがとね!」
にっこりと笑う哉太に青年は微笑んでから幸に向けて言い放つ。
「アリガトウゴザマス。…アカイカミのヒト、…If you are interested, please come to the Faculty of International Studies.(興味あったら国際学部に来てみてね)」
にっこりと笑って言い放つ青年に幸は初めて国際学部という学問に興味を抱いた。
「はい、花ちゃんにプレゼント~」
哉太に花束を贈られた幸は少々恥ずかしさもあったが嬉しさの方が大きかった。だから彼は哉太はへ素直な気持ちを送る。
「えっと…ありがとな…、哉太さん」
「いえいえ~」
「…仏壇に供えようかな?」
プレゼントをされた花を持って歩く幸は哉太に礼を言うのだが、彼はどこかへ向かっているようだ。話しながらポテトを食べ終えてレモネードを飲む幸は哉太に問い掛ける。
「哉太さんどこに向かってんの。なんかの出し物?」
すると哉太は頷いてから幸に話す。
「うんとね~。一応ここの学校の休憩室というか、部屋があってさ~。そこへ行きたいなと」
「…なんでそんなとこに行くんだよ?」
幸に問われる哉太は振り向いてから幸の耳に囁くのだ。…色っぽい声で。
「だって…、幸とエッチなことしたいからだけど?」
「…なっ!?」
「んじゃ、行こっか!」
紅潮させて驚く幸に哉太は笑って手を握った。
この後の展開に幸は緊張をしながら哉太に連れられて休憩室へと入る。
―しかしそこは抜かりの無い哉太だ。休憩室に立て札で『清掃中』という立て札を置いてから部屋へと入室したのだ。
…これから、哉太さんとか。人が居るっていうのにこの人は…。でも…。
―――ドクンッ…ドクンッ!
幸が鼓動を弾ませれば哉太は少しニヤつきながら彼を壁際に追い込ませる。そして幸の顔の傍に手を置いた。
「なに幸、興奮してんの?」
「…うっさい。ただ、またかよって…」
「呆れている割には顔が真っ赤で期待しているように見えるのは…俺だけ?」
ずるい笑い方をする哉太に幸は強く心臓が打たれた気持ちになるも、先ほどの花束の感謝はどこへやら。そっけない態度を取ろうとした…だが顔は紅潮し目を潤ませている姿は哉太を興奮させるには持って来いだ。
―だから哉太は真っ赤になってる幸に深いキスを送るのだ。
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