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【閑話休題】不幸ヤンキー、”狼”を蕩けさせる。《前編》
*バレンタインの設定で書いています。お気を付けください。
チョコレートを溶かし卵黄を入れて混ぜる。そして振るった薄力粉にココアパウダー、そしてメレンゲを2、3回に分けてさっくりと混ぜ合わせ、予熱したオーブンの鉄板をミトンで取り出し、ケーキの型に沿ってクッキングシートを敷いて型を作る。そして混ぜ合わせた生地を入れて、オーブンに押し込みスイッチを押した。
「よし。あとは待つだけ…」
焼きあがるまでなんとなくオーブンを見てから後片付けをすれば…。
「なんか甘い匂いがする~。なに作っているの~?」
甘い香りに誘われてキッチンに出てきた哉太は、幸がなにを作っているのかを尋ねる。幸は後片付けをしながら哉太に問われたのでこのような答え方をした。
「ガトーショコラをな。…ほら時期的にバレンタインだろ?」
「まあそうだね~。…作者の時期的には(*当時のです)」
「あまり作者をイジメんなよ…」
調理器具を洗いながら会話をする幸に哉太はこのような言葉を聞くのだ。
「そのケーキさ~。…やっぱりあのもやしとかジュジュちゃんにもあげんの?」
「…まあそうだけど?」
幸が頷けば哉太はどこか寂しそうな顔をしてから文句を募らせた。
「じゃあ花ちゃんは本命にも義理にも同じケーキ渡すってことだよね。…そんなのずるい。俺だけにしてよ」
「…またあんたは―」
「俺だけのなにかが欲しいよ」
面倒な哉太ではあるが幸はこのような言動を予知していたようだ。溜息を吐きつつも幸は哉太へ言葉を告げる。
「…あんただけの、その…俺は、哉太さんだけにしかあげないプレゼントは無いって言った?」
「じゃあ…あるの?」
すると幸は少し俯いてしまった。
「言わないように我慢してたのに、なに拗ねているのだか。…まったく」
「…やった~! 嬉しすぎる~!」
嬉しそうな表情を見せる哉太に幸は少し恥ずかしそうにした。しかもなにか覚悟を決めてような表情にも見える幸に哉太自身の気持ちが高揚する。
…花ちゃん、俺になにをくれるのかな?
そんな哉太に幸は顔を真っ赤にしてから言い放つのだ。
「その…、恥ずかしいからケーキが焼き終わるまで俺の部屋で待っててくれ。…準備がある、から」
恥ずかしそうな表情を見せる幸に哉太は大きく頷きウキウキの気分で幸の部屋で待つのだ。
原稿なんて手に付かない。あの幸が、ツンデレの幸が顔を真っ赤にさせるぐらいのことだ。相当、自分好みに違いないと彼は踏んでいるようで…。
「なにしてくれるんだろう…。裸エプロンでチョコレート渡してきて…みたいな。いや~、ベタすぎだけどかなり萌えるし、一周回っていいんじゃないのかな。うん!」
胸を高鳴らせて待ち構えて見せれば幸が控えめのノックをしてきた。鼓動が高鳴る哉太は少しテンションを抑えて返事をする。
「ど…そうぞ~」
「お…おう。入るぞ…」
期待が高まる大絶頂…の哉太が振り向いた先は。
―現れた幸は白いエプロンを…服の上から着て手にチョコレートを持っていただけであった。
―――ドダッ!
エプロンは合ってはいるが服を着ていたのが哉太にとっては誤算であったので派手に転がった。
「な…なんだ。まぁそれが普通―」
「かなた…さん…んぅ…?」
「…えっ?」
派手にリアクションをして床に伏せる哉太が顔を上げれば、幸が口元にチョコレートを含ませて口づけをしようとしていたのだ。
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