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不幸ヤンキー、”狼”が襲来する。【2】
―それはただの興味本位でした。
『うららさんの…過去?』
『うん。だって私、お兄ちゃんのことも分かっていなかったんだよ?』
『それは……』
『だから―』
『残念ですが、それは…あなたにとって良くないです』
兄の麗永に聞いても、何度も尋ねても答えてくれなかった自分の過去。
…私は過去になにかをしでかしてしまったのかな?
そんなことを思いながらふと見かけたSNSの広告で見かけてしまったのだ。とても興味が惹かれた広告を。
―『あなたの過去を知りたくありませんか?』―
「知りたいな…。私ってなんだろう?」
その言葉に惹かれて応募をしてしまったのだ。でも当たるだなんて思わなかったがなんと当たってしまったのは偶然か必然だったのか。…それは今、私の目の前で手を握っている幼き少女…心にしか分からないのかもしれない。
『なんかこの子…どっかで見覚えあるよな?』
『わい、この子の予想出来とる』
『だれ~この子』
ネットのコメント欄にて騒いでいる中、幸はスマホに心のチャンネルを映してから哉太へ言い放つ。
「哉太さん、とりあえず春夏冬さんに電話と…とりあえず妹さんに電話掛けておかないと!」
慌てている様子の幸に哉太は自分の興味本位で動いた自分を悔いつつも応じるのだ。
「あっ、うん、オッケー…って、俺。怒られないかな…絶対怒られるよね。これ…」
「そんなことより早く!!!」
「もう~分かったよ~。あ~…雷が落ちる~…」
急かす幸に哉太はしぶしぶ麗永に電話を掛けてみるのだが…繋がらない。何度やっても『おかけになった電話は電波の届かないところに…』という冷たい電話口にしか掛からないのだ。
「ッチ。なんだよもう~」
舌打ちをする哉太をよそに幸は画面越しからではあるが、うららの手を取って過去を見る少女は一体どういう過去を見るのかが気になりつつあったのだ。
緊張をするうららに心は彼女の手を取って一言発した。
「…かわいそう。あなたはとっても可哀想な人ですね」
「かわい…そう?」
すると心はうららの過去を紡ぎ出していくのだ。
「あなたは有名な天才子役だったのですね…。とても演技が上手な子供だった。…でもそれが、あなたの幸運で不幸だったのです」
「なにを…言って?」
呆然とするうららに心は言葉を続ける。
「あなたは両親にその才能を見抜かれ演技を続けていくものの、その両親があなたを利用するようになった。あなたが働いたお金で遊んで暮らしていたのでしょう。それでもあなたは演技を続けていき…あなたは本当の天才になってしまった。…感情などない”人形”のような存在に」
…それはどういうこと?
疑問と驚きで目を見張るうららに心は言葉に出そうとするのだが…。
「だから、あなたは天才子役の―」
彼女の…うららの存在を明るみに出そうとすれば…突然、映像が映らなくなってしまった。
急にカメラが映らなくなったのでコメント欄も荒れている様子だ。
『何があったんだ?』
『結局あの子は何者?』
疑問が飛び交うコメント欄に構わず、幸が驚いていれば哉太のスマホに着信が入った。『麗永』という着信メッセージに哉太が慌てて出れば少し息を切らしている麗永からの連絡であった。
「麗永!? 何度も掛けたけど大丈夫―」
『大丈夫じゃ…ありませんよ。あなたが電話に出なかったおかげで…うららさんが大変な…目に遭ったというのに…』
息切れしている様子の麗永に哉太は問い掛ける。
「…春夏冬さんの所行ったのか。だから出れなかったの…?」
再び驚く哉太に麗永は電話口で言い放った。
『とりあえず、柊君の洋館に…家に来て頂けますよね。…タクシー代なんて、あなたにとってははした金でしょう?』
「ま…まぁ、別に…」
『とりあえず…来て下さい』
―――プツゥッン…。
そして切れた電話に哉太と幸は顔を見合わせるのであった。
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