不幸ヤンキー、”狼”を迎え撃つ。【4】

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不幸ヤンキー、”狼”を迎え撃つ。【4】

 幸とフライが室内へと上がればソファに寝っ転がっているうららが居た。そんな彼女に音刃は呆れつつ呆然としている幸とフライを連れて呼び掛けるのだ。 「だらけているところ悪いけど、彼岸花さんと久遠さんが来てくれたぞ~。…感謝しろよ、まったく」  するとうららはむくりと起き上がり目を擦って欠伸(あくび)をした。そしてオウム返しのように言い放つ。 「彼岸花…君と、久遠…久遠って誰だっけ?」 「…僕のことです」  するとうららがその声に視線を向けると困惑をしているフライと気を遣って笑っている幸の姿であった。来てくれた2人に彼女は驚いて寝転がっていた態勢から慌てて座り直してフライへ謝罪をする。 「フライ君のことだったんだ…。ごめんね!」 「大丈夫だよ…」 「いつもあだ名で呼んでたから分からなくて…」  申し訳なさそうに謝罪をするうららではあるが、少々フライは傷付いている様子だ。…だが言うのを堪えて近況を聞くことにする。 「あぁ~…いつもさっちゃんにはあだ名で呼ばれてるから~。…それよりうららさんは今の所、大丈夫?」  フライが声を掛ければうららは少し苦笑いをしてから語る。 「今の所スマホも見てないし、テレビも見てない…。なんか嫌で。でも、つばめ君が世話してくれてるし、来てくれてるからさ!」  彼女の視線の先には呆れている様子の金髪の青年、音刃がそこに居た。だが彼女を見守るような視線と微笑みにフライは勘付いてしまう。  ―この2人は、特別な関係性だと。だがフライはその事実を再認識したくは無いが、してしまうような反応を見せてしまう。 「おとは…って、えっと…、名前呼びなんだね」 「あ~…幼馴染だからかな~。記憶はなくてもそんな感じするし…、仲良くしてもらってるし…」 「そんなに仲良いんだね…」 「うん、仲良いよ!」  ―――グサァッッッ!!  幸には分かった。フライの背中から鋭利な矢印が後ろからグサリと刺されている姿が目に浮かんでしまったのだ。少し顔が優れていない様子のフライに幸は話題を逸らす。 「あっ、そういえば…あの…哉太さんも来るんだよ!」 「えっ、そうなんだ~。先生も来てくれるんだ~」 「…燕君に言わないとだよな―」  「知ってるよ~、ひがんばなさん?」 「おぉあっ!?」  背後からコーヒーとクッキーを持ってきた燕に驚いた幸へ彼は溜息を吐いている。相変わらず燕は謎の存在である。彼はテーブルにコーヒーとクッキーを置きながら話し出す。 「ばじしゃくさんから電話くれたよ~、まぁそんな驚かずに…」 「いや…驚くだろ」  ショックを受けているフライを労わる傍らで席へと着くと、燕は少々嬉々としている音刃へ言葉を掛けた。 「あっ、ことひらさんはなんか会いたがってるみたいだけど…どうして?」 「あぁ…、…えっと」  うららと話し込んでいた音刃が燕に問いかけられれば彼は深い笑みを見せている。 「場磁石先生は俺のだからさ~。だから会えるのが嬉しくて…」 「恩人…どういう意味で?」  幸が音刃に尋ねてみると音刃が話そうとした時、幸のスマホが鳴った。画面には『哉太さん』という文字が現れていたので幸は画面をスライドさせて通話に出た。 「もしもし、哉太さん?」 『花ちゃん~お疲れ~! 今、燕君の家?』 「そうだけど…、もう少しで来れるのか?」 『もうそろそろでね~。待っててよ!』 「当たり前だろ~。分かったから気を付けろよ?」 『ありがと~、じゃあまたね~!』  着信を切れば音刃は不思議そうな表情を見せている。 「えっと…。彼岸花さん…いや、彼岸花は場磁石先生と仲良いのか?」  突然の問い掛けに幸は戸惑いつつもその場をやり過ごす。 「あぁ…。まあ、そうだけど」  すると音刃は目を伏せてある言葉を投げ掛けたのである。 「…覚えているかな~?」 「?」  音刃の言葉に幸は訝しげな表情を見せる。おとなげない哉太のことだ。なにかをしでかしているに決まっている。そう思った幸が探ろうとすれば燕が後ろで笑っていた。 「…なんで燕君が笑ってんの?」  すると燕はテーブルにコーヒーを置いてから凛としているが柔らかい声で言い放つ。 「いや、賑やかになったな~って思っただけ」 「…?」  燕の含んだような笑みが幸は気になった。
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