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【閑話休題】不幸ヤンキー、”狼”と遊ぶ。《後編》
「…す、ごい、俺、凄い?」
「うん。才能あると思うよ?」
すると幸はふにゃりと微笑んでから爆弾発言をしてしまうのだ。まるで甘えた子供のように。
「でも俺、…かなたさんの方が、哉太さんの奴が、機械より全然いいや」
「…さち?」
「…俺、哉太さんにイれられた方が、しあわせ…だから」
無垢であった彼の甘ったるい言葉にハートを撃ち抜かれては…哉太は自身を大きくさせた。そして哉太は意気込みを見せるように幸へ目線を向ける。
―その真紅の瞳は酩酊している青年を離さず、じっと見据えていた。
「幸は本当に可愛いね。…ちょっと激しくしちゃう…かも」
「あはっ。俺も…がんばるから」
そんな興奮気味の変態男に天然な不良少年は淫らな発言をしては、彼の意識さえも奪ってしまう。…それだけ2人共に興奮気味であったからだったからかもしれない。
「激しくシて?」
「…幸のバカ」
哉太は幸の言葉だけで射精してしまいそうな自分の変態さを誤魔化すように腰を上下に振るのであった。
「…場磁石。…一応、児童文庫も書いている先生が…こんな少年少女の心を破裂させるような文章を書いて良いと思うか?」
眉間に皺を寄せつつ微笑むという芸当が出来る撫子に哉太は間延びした言い方をした。
「撫子の意見はごもっともだけどね~。でも俺は俺だし~?」
コーヒーを飲みながら喫茶店にて、文章を持ち込んだ哉太が書いてきたのは…官能小説ことBL小説であった。普段なら笑って過ごす撫子でさえもブチギレそうではある。だが哉太は全く彼を気にも留めていない。
そんな哉太に撫子は怒るのを止めて小説を読み返した。内容や設定はめちゃくちゃではあるがさすがはプロの小説家かつベストセラー作家だ。文章がとてつもなく入り込んでしまえるほどだ。そして撫子は軽やかに、豪快に笑うのだ。
「…はっはっは~。まぁ今回は俺の範疇ではないけど見事だな。他の編集者に―」
「いや。撫子が良い。他は絶対に嫌」
「…だと思った。俺が優秀かつ懐が大きくて良かったな~?」
「俺のおかげで食わして貰っていると思っとけ」
さらりとひどい事を言う哉太ではあるがこの作品のペンネームは考えてある。…それは。
「彼岸花 彼方で良いのか? なんか儚げだな~」
しかし哉太はとても満足げで嬉しそうな表情を見せた。そしてこのペンネームにした意味を述べるのだ。
「いいの。…この小説は俺と幸から生まれた子供のような存在だから」
哉太が笑みを浮かべコーヒーを啜るのであったとさ。
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