ユリエル

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ユリエル

 私は天使だ。中学校を卒業してからすぐ両親の入っている天の虹教団で天使となった。それからは教団の言うとおり人助けをしてきたつもりだ。     天使となってからは天使名になる。私はユリエルと名乗ることになった。機械翼という機械で出来た羽をつけ慈善事業を行うのは嫌いだった。  これはとある冬の一日。目の前に飛び降り自殺しようとしている少女が一人。 「自殺すると天国に行けなくなりますよ」 「新興宗教のやつになんて言われたくない!」  イラッとしたが我慢する。 「教団でも同じです。自殺したら地獄行きです」 「やめた」  気がそれたらしい。彼女は自殺をやめるようだ。良かったと胸をなでおろす。 「でも、死ぬことがそんなに悪いことだとは思えないの。生きたくなるにはどうすればいいの」 「ではわたくしがお話して差し上げましょう」  そうすれば気もそれるだろう。  教団で言われている天の国には大きな虹がかかり、白い花がいっぱいに咲いている。ずっと暖かい気候でまさに楽園である。  私達は神の使いである教祖様から機械翼を与えられ、人間の手助けをするように言われています。人間がみな、楽園に行けるように。天使となった我々は日々、働いているのです。 「つまんな」と少女  失礼だなと思いつつも考えない。教団は私にとって絶対だから。 「あなたお名前は?」 「ユリネ」 「わたくしと似てますね。わたくしはユリエル」 「年はいくつ?」 「18歳」 「わたくしと同じですね」  少女は私にやっと関心をよせる。 「エセ天使と同い年なんて」  エセとは失礼な。私だって本当は天使をやめたいのに。 「私ね天使に憧れているんだ。あなた達じゃなくて一般的なほうね。魂を持っていく仕事って素敵じゃない?」 「うーん」 「天使になりたいな。そしたら嫌なこと全部忘れられそう」 「うーん」  私としては別な宗教の話をされるとこまる。返答に悩むからだ。 「ただの死にたがりと話していてもつまんないでしょ。ユリエルさん」 「そんなこと無いですよ」  今日は機械翼で空を飛んでいた。するとビルから飛び降りそうになっているユリネを見つけた。そして最初のやり取りに戻る。  ユリネは真っ黒な長い髪に学校の制服姿、足にはローファーを履いている。  対しユリエルは真っ白い長い髪に白いワンピースを着ている。足には白いブーツ。天使は皆、白い服装でなければならない。だが、白い髪は親譲りのものだった。  ユリエルはユリネを美少女だと思った。自分は異国の血が入っているため華奢ではない。小柄なユリネがかわいらしくみえた。 「私はいつでもこのビルにいるから。いつでも死ねるように。ユリエルさん」 「そんなこと言わないで下さい。ユリネさん」  ユリネは高校生だろう。高校にいけるだなんて羨ましい。なぜ、こんなに死にたがっているのか。大方、煩わしい人間関係だろう。  ユリエルは壁を作るタイプだったので、人間関係にはあまり悩んだことはなかった。それにそういう性格でもあった。 「ではわたくしと仲良くなりませんか。ユリネさん」 「えっ。いーけど」  ユリネは驚いた顔をした。 「またこのビルに来ます。そうしたらあなたは死にたくならないんでしょう」 「そういうことか」 「ユリネさん。死んだらいけませんよ」 「分かった」  私は機械翼で飛んだ。私はなんとも思っていなかった。ユリネと"仲良くなる"ことに
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