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ユリエル(2)
今日もあのビルに向かう。ユリネが、死なないようにみはるためだ。ユリネはネットをじっと見つめていた。
「あっ、ユリエルさん。そういえば本を買って読んでみたよ。ショートショートっていうシリーズだけど面白かったよ」
「ショートショートですか。それは良い。私も昔読んだことがあります。それにユリエルでいいですよ。同い年ですし」
「分かった。ユリエル。私もユリネって呼んでいいよ」
ユリエルは明日はビルに来れない。天の虹教団の指示で海岸でゴミ拾いをするから。ユリネのみはりができない。ユリネに伝える。
「そういえば何かありましたか?」
「なにもないよ。ビルに来るか、家にひきこもっているかだもん」
「あなた学校に行ってないんですね」
「うん」
「いかなきゃいけませんよ。私と約束して下さい」
「約束できない!」
ユリネは出ていってしまった。
次の日、私は他の天使たちや父と母と一緒に海岸でゴミ拾いをした。父と母は優しい。私が反抗しないからだろう。義務教育が終わった次の日には教団に入れられていた。だから私には反抗する時間などなかったのだ。
ユリネが羨ましい。どこにでも行ける"羽"があるから。私は機械翼はあれど、教団に縛られている。私は天使をやめたかった。
特にしたいことはないが、私は教団のあり方に疑問を持っていた。義務教育を過ぎてすぐに教団にはいること。好きでもない相手と勝手に夫婦にされること。慈善事業もめんどくさい。
ただユリネの言う天使はいいなあと思う部分があった。それに本を勧めたら読んでくれた。私に少なからず関心を寄せてくれてる。そんな人初めてだった。
次の日、朝礼が終わったら真っ直ぐにあのビルに飛んでいった。ユリネはいた。
「ユリネ、この前はごめんなさい。貴女のことをよく知りもしないで言ってしまって」
「いいよ」
私は少しほっとした。ユリネから許しをもらって安堵した。
「ユリネは好きなことありますか」
「音楽鑑賞かな」
私はスマホをもっていない。上級の天使のみに与えられるから。それに音楽鑑賞機器も持っていない。
「じゃあ一緒に聞こう」
ユリネはスマホをだし曲をかける。内容は人生についてという歌詞だった。人生待っていたって始まらない。誰もいないけど走っていけという内容だった。
(ユリネはこんな歌が好きなのか)
「曲は興味深いわ、ありがとうユリネ」
「どういたしまして、他にもあるよ」
二人は飽きるまで曲を聞いていた。
「曲って面白いわね」
「でしょ」
「ごめんなさい昼礼だわ。いかなくちゃ」
「昼礼?」
「私達は毎日、朝が始まる朝礼、昼が始まる昼礼、夜が終わる終礼を教祖様にしなくてはならないの」
「そうなんだ、めんどくさいね」
「ちょっといってくる」
天の虹教団にいく。もうほかの天使たちは集まっている。皆で昼礼を迎えた。
ユリエルは戻ってきた。
「ごめん。おまたせ」
「待ってないよ」
それからは二人で曲を聞いた。恋愛の曲。人生の曲。友情の曲。ユリネは色々聞かせてくれたのだった。そして一日が終わった。
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