ユリエル(2)

1/1
前へ
/6ページ
次へ

ユリエル(2)

 今日もあのビルに向かう。ユリネが、死なないようにみはるためだ。ユリネはネットをじっと見つめていた。 「あっ、ユリエルさん。そういえば本を買って読んでみたよ。ショートショートっていうシリーズだけど面白かったよ」 「ショートショートですか。それは良い。私も昔読んだことがあります。それにユリエルでいいですよ。同い年ですし」 「分かった。ユリエル。私もユリネって呼んでいいよ」  ユリエルは明日はビルに来れない。天の虹教団の指示で海岸でゴミ拾いをするから。ユリネのみはりができない。ユリネに伝える。 「そういえば何かありましたか?」 「なにもないよ。ビルに来るか、家にひきこもっているかだもん」 「あなた学校に行ってないんですね」 「うん」 「いかなきゃいけませんよ。私と約束して下さい」 「約束できない!」  ユリネは出ていってしまった。  次の日、私は他の天使たちや父と母と一緒に海岸でゴミ拾いをした。父と母は優しい。私が反抗しないからだろう。義務教育が終わった次の日には教団に入れられていた。だから私には反抗する時間などなかったのだ。  ユリネが羨ましい。どこにでも行ける"羽"があるから。私は機械翼はあれど、教団に縛られている。私は天使をやめたかった。  特にしたいことはないが、私は教団のあり方に疑問を持っていた。義務教育を過ぎてすぐに教団にはいること。好きでもない相手と勝手に夫婦にされること。慈善事業もめんどくさい。  ただユリネの言う天使はいいなあと思う部分があった。それに本を勧めたら読んでくれた。私に少なからず関心を寄せてくれてる。そんな人初めてだった。  次の日、朝礼が終わったら真っ直ぐにあのビルに飛んでいった。ユリネはいた。 「ユリネ、この前はごめんなさい。貴女のことをよく知りもしないで言ってしまって」 「いいよ」  私は少しほっとした。ユリネから許しをもらって安堵した。 「ユリネは好きなことありますか」 「音楽鑑賞かな」  私はスマホをもっていない。上級の天使のみに与えられるから。それに音楽鑑賞機器も持っていない。 「じゃあ一緒に聞こう」  ユリネはスマホをだし曲をかける。内容は人生についてという歌詞だった。人生待っていたって始まらない。誰もいないけど走っていけという内容だった。 (ユリネはこんな歌が好きなのか) 「曲は興味深いわ、ありがとうユリネ」 「どういたしまして、他にもあるよ」  二人は飽きるまで曲を聞いていた。 「曲って面白いわね」 「でしょ」 「ごめんなさい昼礼だわ。いかなくちゃ」 「昼礼?」 「私達は毎日、朝が始まる朝礼、昼が始まる昼礼、夜が終わる終礼を教祖様にしなくてはならないの」 「そうなんだ、めんどくさいね」 「ちょっといってくる」  天の虹教団にいく。もうほかの天使たちは集まっている。皆で昼礼を迎えた。  ユリエルは戻ってきた。 「ごめん。おまたせ」 「待ってないよ」  それからは二人で曲を聞いた。恋愛の曲。人生の曲。友情の曲。ユリネは色々聞かせてくれたのだった。そして一日が終わった。 
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加