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中島の手には、力がある。
「手、触ってみる?」
熱を帯びた視線を向けられて、訊かれた男の頬がぽぽぽ、と染まっていく。訊ねた男もじんわりと頬を染め、唇を結んで目を逸らす。
二人の手が、カウンターの上で重なる。大ぶりで骨太な手の甲を、爪を切り詰めた少し小さい手が覆うかたちで。
骨太な手が裏返る。スッと離れる小ぶりな手を捕まえて、手のひらと手のひらを合わせる。爪を黒く塗った長い指が、丸っこい爪の周りをなぞる。
それから、ふたつの手は恋人繋ぎに結ばれた。
二人の手は火照っている。熱を分け合ってるみたいだ。そう思う遥二の顔も、恥ずかしさと期待で上気している。
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