AI造形ボディスーツ 通称「アイ・Bスーツ」

5/6

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「歩瑠夏、武蘭おはよう」  教室のクラスメイトが声をかける。 「ねぇ歩瑠夏、ニュース見た?プロバスケットボールの多鹿選手、プロバスケ界永久追放だって!」 「えー!やっぱりそうなったのかぁ。多鹿選手、好きだったのになぁ」  多鹿選手は先日の公式戦で『アイ・Bスーツ』の不正使用をし、捕まった。  筋力10%upを設定(インプット)した上、特殊テープでレベルラインを視覚的にも機械的にも認識できないように細工した。  歩瑠夏がバスケット選手のファンだと知っていたので、今日体育で良いところを見せたかったのだが…。  歩瑠夏がチラリと俺を見上げ「永久追放だって」とはにかんだ。 「わかったよ…」  そう言って俺は男子更衣室へ向かった。  個室へ入り、衣類を全て脱ぎ去った。 「ジャイナ・P889410解除」  その言葉で俺の身体から『アイ・Bスーツ』が離れ、丸まっていく。  携帯のアプリでデフォルトモードへ設定し直し、ブルっと身震いしてから「ジャイナ・P889410装着」と唱える。  季節に関わらず、1日の間でも目まぐるしく変化する気温。  その為『アイ・Bスーツ』の温度調整の機能は欠かせないものとなっているが、早朝の更衣室など、環境が整っていない空間での脱着は正直厳しい。  ゴム毬のようだった『アイ・Bスーツ』は俺の声に反応して膨らみ、ゆっくり俺の身体を包んでいく。隙間なく凹凸にフィットし、目や鼻、口など必要な穴は塞がないように少し内側までカバーされる。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加