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告白
「ごめんなさい。武蘭とは付き合えない」
日曜日の午後。
歩瑠夏が俺の部屋に遊びに来た。
今がチャンスだと思い「俺と付き合って欲しい」と告白すると、歩瑠夏は目に涙を溜めて押し黙ったまま目を泳がせていた。
そっと彼女の頬に手を当て口づけすると、大粒の涙と同時にその謝罪の言葉がこぼれた。
「どうして。俺は……ずっと歩瑠夏と一緒にいられるのだと思っていた」
その言葉に大泣きする歩瑠夏。
俺はそっと彼女の身体を引き寄せ、抱きしめる。
すっと、ずっと好きだった。
屈託のない笑顔、優しい眼差し、透き通った美声。
『アイ・Bスーツ』なんてまがい物とは無縁の歩瑠夏。
外見が良いだけじゃない。性格だって良いんだ。
誰にでも優しく、頑張り屋で、時に積極的で、自分の人生を楽しんでいる、という感じが俺にとっては眩しかった。
引き寄せた身体は拒絶することなく、泣いたまま俺に体重をかけてきた。
その重みを受け取るべく、俺はきつく彼女の身体を抱きしめた。
「私も……私も一緒にいたい。だけどダメなの。無理なの。叶わないの」
歩瑠夏が震える小さな声で呟いた。
俺は彼女の身体をゆっくり引き離し、涙をこぼす彼女の顔を覗き込んだ。
歩瑠夏の顔色は、いつもと変わらずキレイな肌の色だった。
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