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「ぽ…歩瑠夏?」
歩瑠夏はどこに行った?なんて馬鹿なことが言えない。
俺の目の前で歩瑠夏は今の姿になったのだから。
「これが、私の本当の姿」
しゃがれ声でそう発する小さな歩瑠夏。
「声が…」
「うん、声も『アイ・Bスーツ』のおかげ。それは驚くことではないでしょう」
性転換をする際には声色も変化できるようになると、確かに聞いたことがある。
「歩瑠夏は…その…」
「宇宙人じゃないからね。れっきとした地球人だよ。ただ、産まれ方が他の人と違うだけ」
「い、いや…その…」
頭によぎった事をずばり言われてしまい、重要な話の方に反応が遅れてしまった。
「う、産まれ方が違うって、どういうことだ?」
「私、『AiBS製体外妊娠ボディスーツ』産まれなの」
男性も妊娠可能とした『AiBS製体外妊娠ボディスーツ』。
その名の通り、ボディスーツの中で胎児を育てる専用スーツ。
歩瑠夏の母親の場合、身体が弱く通常の妊娠・出産は不可能という事で体外妊娠ボディスーツでの出産となったという。
「体外妊娠ボディスーツが廃止となったわけはね、出生率の悪さといわゆる『奇形児』の出産率の高さなの。流産・死産が30%、無事出産できても20%が私のような姿で産まれるの」
年齢に関係のない、不妊治療の有効な手段だと関係者らは唱えたが、神をも恐れぬ行為だと反対派と被害者家族らは販売の禁止を訴えた。
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