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AI造形ボディスーツ 通称「アイ・Bスーツ」
「武蘭、今日はマッチョだね」
ツインテールの髪を揺らし、幼馴染の歩瑠夏が後ろから声をかける。
大きな目、白い肌、血色の良い頬と唇。
愛らしい笑顔の歩瑠夏はいつも通りだ。
「あぁ、今日は体育でバスケらしいからな。って、そんなにわかるか?」
俺はシャツの上から自分の身体をペタペタ触る。
「ん〜、いや、どうだろう。後ろから見て、なんとなくそんな気がしたから」
歩瑠夏が俺の身体を上から下まで舐めるように眺めるので、ちょっと恥ずかしくなってきた。
「歩瑠夏ぐらいだよ、俺の背中を見ただけで変化に気がつくのは」
「わからないよ〜。体育の小林先生が武蘭をお気に入りだったらバレるかもよ」
「あぁ、そういえば俺を見る目がちょっと違うと思っていたんだ」
「えぇっ!?本当に?」
「んなわけねーよ」
当然嘘である。ちなみに小林先生は50歳男性と知らされている。
ケラケラ笑う二人。
俺、川上武蘭と隣を歩く山下歩瑠夏は小学校からの腐れ縁で、同じ高校へ通っている。
「でも首のレベルライン、薄っすら見えているから気をつけて」と、歩瑠夏は自分の鎖骨の上あたりの真っ白な肌を指差した。
「マジ?目立つ?5%にとどめたんだけどな」と俺は片手で隠すように自身の首を触る。
「あ、最新の『アイ・Bスーツ』の広告だ」
駅ビルの壁一面に表示された、エキゾチックな美女の映像。
真っ白のシンプルなドレスで均衡のとれたボディを見事に表現し、目の周りに施された色使いが妖艶さを助長させている。
美女の首には、黒いチョーカーのような太いラインがくっきりと入っている。
「キレイ…。これ、T3社のでしょう。やっぱりT3社の『アイ・Bスーツ』の性能が一番良いわよね」
歩瑠夏が歩みを止め、その広告の映像をうっとり眺める。
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