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黙祷
@ian:KIRIKOって有名アイドルだった子でしょ? めっちゃ前の子だけどシーナ知ってんの?
『知ってるよー。かなり有名だもん! この時期名前めっちゃ聞くし、それで知る人もいるんじゃないかなー』
画面の中、可愛すぎるキャラクターが身振りをつけて話している。顔にも声にも、羽毛より軽い笑みがあった。秒単位で書き込まれるコメントが“KIRIKO”の存在の強さを示している。
@gede:当時のニュース覚えてる あれはインパクト凄かった
@Ninn:顔面なwwwwwww
@sino:そっち?wwww
『私もめっちゃ覚えてるー! あの子もさ、こういうネットの世界選んでれば良かったのにねぇ』
@wasu:歌もトークも上手かったもんね
@koancha:過去動画見たけど完璧って感じだった あれはファンになる
@bigman:なのに顔面wwww
『そしたら苦労もなかったと思うし』
他人事を極めた声に、激しく同意した。顔の要らない世界に所属していれば“あの子”が傷を負うことはなかっただろう。
きっと、苦しむことも絶望することも、何もかも知らなかった。
『死なずにも済んだのにねー』
@gede:今日命日ってニュースそればっかし
@sino:ご愁傷さまですww てか結局なんで死んだの?
@ian:過激ファンの仕業 あれはちょっと可哀想だった気 シーナどう思う?
『うーん、そうだね! 可哀想だった! よし、じゃあ今から黙祷しまーす! 黙祷!』
合図と同時に、コメント欄が二文字で埋まる。どこか無情な世界を、私もまた無情に見ていた。
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