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悪魔は笑う
「そんなことがあったんだ。もしかしたらその友だち、悪魔に憑かれてたのかもねぇ」
隣席にて、弁当を食べ終えた少女が笑う。桜庭とも羽島とも違う、能天気そうな人だ。僕に気があるらしく、色々な話を聞きたがった。
「そいつは死んで正解だったって私なら思うけどなー。でも羽島くん?は精神病んじゃって、桜庭さん?はどっかへ消えちゃったんでしょ? 全然自分のせいじゃないのにねぇ」
話の通り、あの後羽島は心を壊した。一年経った今も精神病棟にいる。
桜庭はと言うと、僕らに何も告げず消えた。僕だけがこの学び舎で進級し、退屈な学校生活に務めている。
「羽島の奴、本当馬鹿だよね」
真っ直ぐで人懐っこくて、面倒ごとを全て引き受けてくれた羽島。彼といれば僕は楽ができた。
それに、危険を孕んだ性質は、見ていて興味深かった。いつか、面白いことをしてくれるんじゃないか――なんて期待は、長い仕事待ちのいい退屈凌ぎだった。
「あっ、もしかしたら、その桜庭って子が悪魔だったんじゃない? それで逃げたんだよ!」
「うーん、それはない気がするなぁ」
「いやいや、絶対そうだって! 私の勘、外れたことないよ!?」
少女は絶対を連呼し、一人で楽しげに笑う。密かに無視をしても気付かれないというのは随分楽だ。
「そうだ、今日の放課後掃除変わってくれない?」
「いいよー、暇だしやったげる!」
「ありがと、君は優しいね」
桜庭は悪魔ではない。彼女の父親だって違うし、もちろん羽島も違う。
あの事故は、誘発ではなく偶発した出来事だ。本物の悪魔ならば、もっと残酷な事件を作り出す。
証拠はないが、僕には確信があった――いや、違う。僕だから確信できた。
だって、僕こそが人に化けた悪魔だから。
あーあ、退屈だ。早く楽しい仕事がしたい。
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