恋人たちの秘密

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「おはよう赤木!」  いつも通りの空気を纏い、羽島は現れた。状態から、特に問題はなかったのだと察する。 「おはよう、無事連絡は取れたみたいだね」 「えっ、あれっ、なんで知ってんの」 「昨日、桜庭さん教室まで探しに来てたから」 「あーそういうことか、なるほど。んー……」  表情を二転三転と転がした末、眉間に皺を寄せた状態で止まった。あからさまに悩んだ後、そっと耳打ちしてくる。 「これ内緒にして欲しいんだけどさ、俺バイト始めたんだ。昨日はシフト急に変わったもんだからさ――」  連絡見れてなかったって言ってたな――と、ご丁寧に理由まで言い切り、羽島は苦笑した。  我が校は、アルバイトが禁止されている。とは言え、学校側は半分目を瞑っているようだが。しかし、仮にも規則を犯してまで金が欲しいとは。 「バイトか、付き合うってのも大変だな」 「いやいや、彩歌ちゃんの為なら喜んでって感じだぜ!」  声を大にしてしまった羽島は、ハッと口を塞ぐ。ただ、周囲は内緒話など気にしていないようで、聞こえた部分だけ拾っておちょくっていた。
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