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二人の間に何がある?
教室を移動するべく、教科書を揃える。立ち上がったタイミングで隣を見ると、猫背になった背中が見えた。
手元のスマートフォンを見つめ、ニュースらしき画面に集中している。反射する瞳に、僅かな陰りが見えた――気がした。
「あっ、もう行くの? 俺も行く! マッハで教科書出すわ!」
言葉通り、忙しく教科書が用意される。瞳には煌めきが戻り、表情にも通常が戻っていた。
恐らく、僕じゃなきゃ気配に気付かなかっただろう。
*
「羽島さ、なんかあった?」
「なんで?!」
廊下にて尋ねると、羽島は大袈裟に驚いた。しかし、演技はやめたくないらしく、苦くなった笑みを披露し続けている。
「ニュース見て落ち込んでるように見えた」
「あー、なるほど。んんーと……悪魔ってさ、なんで悪さしたがるんだろうって思ってさ!」
何がなんでも言う気はないらしい。それならば追求する気もないと、話に乗ることにした。
「……なんで、か。うーん、好きだからとか、もしかしたらそれが仕事なのかも」
「はは、面白い意見だなぁ! 悪魔の仕事って言うと、人を病ませたり、殺させて人工減らしたりとか?」
「そうそう、上に命じられてさ。人間使ってお勤めしてるのかも……なんて」
いかにも馬鹿らしい話に、笑声が被さらない。既に相当蝕まれているのか、顔が引きつっていた。
「桜庭さん、か」
「えっ」
半分独り言のつもりが、反応されて確信する。やや狼狽えていた羽島は、見破られたと勘違いしたようだ。ついに笑顔を放り出して、歯切れ悪く声を溢しはじめる。
「えっと、あの、じ、実は彼女さ……やっぱりなんでもない!」
結局は、曖昧に蓋をされたが。
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