二人の間に何がある?

2/3

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 今日も今日とて、羽島は手品のように教室から消える。もぬけの殻が通常化した隣席を眺め、帰り支度を整えた。  退屈からの解放で、教室が賑わっている。悪魔の餌食になる人間が、この中に何人居るだろうか――ふと考える。  知性ある者には、少なからず黒い部分(ひみつ)があるものだ。羽島にも、桜庭にも。なんて、僕も他人事じゃなかったな。  例えば、誰が悪魔か分かる、とか。悪事の気配を感じる、とか。その上で何も言わない――とか。  羽島が知ったら、瞳の色を変えること間違いなしだ。なんて、一生言う気はないけど。  フッと口角をあげ、教室を出る。廊下を歩いていると、どこからか羽島の声が聞こえた。もう一つ、女子の声――恐らく、桜庭の声も共にある。  自然と目線をやった先、二つの人影を発見した。距離としては随分遠く、半身は死角に隠れている。しかし、何をしているのかは、はっきり分かった。  羽島が桜庭に、財布から抜き出した千円札を渡していた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加