4人が本棚に入れています
本棚に追加
放課後。
「山田」
先生が、声を掛けて来た。
山田くんは、返事をしない。
先生が、訝しむ。
「どうした?何があった?橘先生に告白したのか?」
山田くんは、先生を睨んだ。
先生は、黙り込んだ。
「一昨日、先生を見た」
「俺を?」
「橘先生と一緒にいる所」
「あぁ、そうか・・」
「なんで付き合ってること黙ってたの?」
「山田・・あれはな、休憩時間だったんだ」
「??・・・なんの?」
「一昨日、研修だったんだよ。多分昼休憩に食べに出た所をお前が見たんだな」
「・・で、でも、橘先生とだけ一緒だったじゃん!」
「そうだな、山田。あのな、橘先生はな・・」
「あれ、どうしたの?花ちゃん」
橘先生が、通りかかった。
「ちゃんはやめろ」
先生が、無感情に応じる。
橘先生は、山田くんを見た。
「君は山田くん」
「はい・・」
「今日は、体調どうだった?」
「だ、大丈夫です・・」
「なんか困った事あったら、遠慮なく言ってね」
「は、はい」
「山田」
「・・はい」
山田くんは、先生を見た。
「橘先生は、俺の母だ」
「・・・・・・・は?」
先生は、自分と橘先生を交互に指さす。
「ここ親子だ」
「は??!え??は??え、で、で、でも歳同じくらい・・?」
「そうだな」
「私の方が、二つ上だね」
「橘先生は、父の再婚相手だ」
「ええっ!?」
「そんな事務的に言わなくても」
「後妻だ」
「もっと嫌」
「え、・・・い、一緒に住んでるんですか?」
「まさか」
「間違い起きそうよね」
「生徒の前で生々しい事言うな」
「冗談よ」
思わず、昼ドラ展開を想像する山田くん。
「旦那さんとの年の差って・・」
「三十かな」
「さんじゅう・・」
「私のダーリンは校長先生だったの」
「こ・・」
「私が先生になるまでずっと待っててくれたの」
「そ、そうなんですか・・・」
「花ちゃんも、こう見えて彼女いるのよ」
「・・花ちゃん?」
「俺だ」
「えっ?!!」
「もうすぐ結婚するの」
「ええええーー?!!」
「山田、今までの会話、全部忘れていいからな」
「・・お、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「なんで言わないんですか?」
「色々面倒だろ。説明が。生徒に気い遣わせたくないし」
「そんな・・」
「お前らは、自分たちの事で充実してればいいんだよ」
「先生・・」
山田くんは、失恋のショックが、何処かに行ってしまった。
というか、もうよく分からない。
「山田」
先生が、山田くんを呼ぶ。
山田くんは、先生を見る。
「悪かったな。何も言わなくて」
「・・・」
「お前の想いを大事にして欲しかったんだ」
諦めたりしないで。
「先生・・」
山田くんは、橘先生を見た。
「橘先生」
「はい」
「好きでした」
「ありがとう。・・ごめんね」
山田くんは、じんわり涙ぐんで、微笑った。
おわり
最初のコメントを投稿しよう!