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黒い猫
少年が家に帰ったことを見届けた後、背後の草むらがガサガサと揺れる。のそりのそりと顔を見せたのはここら辺を仕切っている図体だけは大きな奴だ。
「よぉ新入り、今日もあいつと一緒にいたのか。あんなにお前を毛嫌いしてるやつと一緒にいても飯の一つも出てこないだろうに、ご苦労様なこったな。」
「たしかに腹が膨れる話じゃないがね。あれだけ「助けてくれ」って泣きつかれたら、昔の恩も関係無しに助けてやりたくなるものだろう。」
「そうは言ったってよ。別に本人は助けてほしそうにもしてないし、「構わないでくれ、迷惑だ」、なんて冷たいことを言ってたじゃないかよ。」
奴は丸い頭を傾げながら、ドカッと隣に座りこんだ。
「…目だよ目。「目は口程に物を言う」だなんて昔から言うだろう?
あの子は昔からお喋りだったから、口をつむっちまった分今では目が話しかけてくるから分かるんだよ。
だからそうだね。少なくとも口だけじゃなく、目までつむってしまうまではあの子の側にいる予定さ。」
「ふーんそんなもんかね。別にあんたが構わないなら止めはしないがよ。もしまた何か困ったらいつもの所まで来てくれや。」
---1人。静かな夜道が戻ってくる。
黒い猫は明かりがともった一軒の窓を眺めながら、嬉しそうに二本の尻尾を揺らした。
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