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積もりに積もった……
真帆と父とアリッサは別の部屋へ移動した。3人は和室の畳の上に座ると真帆が父に話しかけた。
「お父さん。良かったの? 2人にして」
「まあ。俺は亜紀を信じているから」
「そうだね。私もお母さんを信じてる」
✧ ✧ ✧
2人きりになった亜紀とアリッサの父は何も話せずにいた。思わぬ再開に何を話せば良いのか、話したいことはあるのに多すぎて逆に何から話せば良いのか分からない。気持ちだけ当時に戻ってしまう。
「元気だった?」
亜紀はぽつりとつぶやくようにたずねた。
「うん。亜紀さんは?」
「ええ。元気よ」
再び2人は沈黙してしまう。
「娘さんがいるのね」
「ああ……うん。アリッサって言う子なんだ」
「あなたに瞳がよく似てる」
「真帆ちゃんだって、あの頃の君にそっくりだよ」
「そうね」
「真帆ちゃんにこっちで暮らさないかって聞いたんだ」
「え?」
「断られたよ。今の両親が大事だからって」
「そう……」
「旦那さんはどんな人?」
「真面目で堅い人だけど、真帆や私を大事にしてくれてる。とても素敵な人よ」
「そっか……」
「奥さんはどんな人?」
「ほんわかしてるけど、しっかりしてる人だよ。俺にはもったいない」
「まさか、再会するなんて思いもしなかった……」
「そうだね……」
「亜紀さん」
「何?」
「あの頃は本気で君を思っていた。でも、添い遂げられなくてごめん」
「仕方のないことよ。あの頃は魔法の国は人間を受け入れてくれなかったでしょ?」
「うん。真帆ちゃんが来たお陰でそれも変わったよ」
「真帆が?」
「そう。真帆ちゃんが頑張ったから」
「そう……真帆が……」
「とにかく元気で幸せそうで良かった」
「そうね。お互いに」
2人は笑っていた。心からの笑顔で。あの日悲しい別れは今に繋がっていた。
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