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真帆は竹箒を持ち掃除を始めた。しかし、密かにため息を付く。長女で跡取り。産まれた時から決められた人生。跡取りになりたい訳ではない。けれど、他に何がしたいかも分からない。
――今はまだ分からないけど……。これがしたいって分かったら、お父さんやお母さんに言いたい。
朝の掃除を終わらせ、皆で朝ごはんを食べるとちょうど学校へ行く時間になった。
「真帆」
父親が静かに声をかけてくる。低音のよく通る声だ。
「はい」
「今日は夜、話があるから17時には帰りなさい」
「はい」
――なんだろう、話って?
真帆は心の中で首をかしげながら学校へ向った。
✧ ✧ ✧
学校が終わるとまっすぐ家へ帰る。17時どころかまだ16時にもならない。
境内へ入ると参拝者がちらほらといる。誰も近寄らない森林の方へ足を踏み入れると、白い狐がいた。
――ん? 白い狐? こんな所に狐なんて珍しい……。 ちょっとだけなら良いよね?
真帆は誘惑に勝てずに白い狐に付いて行く。ところが、狐は突然姿を消した。
――あれ? どこへ行ったの?
辺りを見渡しながら狐が消えた辺りをまっすぐ進んで行くと、突然ひんやりとした空気を感じ、次の瞬間温かい空気に包まれた。そして目の前に広がっていたのは、森林ではなく、公園だった。
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